研究課題/領域番号 |
18K14171
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小澤 暁人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (20783640)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 家庭部門 / 電力需要 / 太陽光発電 / エネルギーマネジメント / 予測モデル / 深層学習 |
研究実績の概要 |
日本の家庭部門における野心的な省エネ目標を達成するに当たって、2030年には太陽光発電(PV)が新築住宅の標準設備となる。一方でPVなどの再生可能エネルギー発電(再エネ発電)導入時には、出力変動に対する調整力の確保が課題となる。そこで新たな調整力として、住宅の電力需要・PV出力に対して住宅エネルギー設備(蓄電池・燃料電池等)を制御することにより住宅内で出力変動を吸収するエネルギーマネジメントが検討されている。効果的な住宅エネルギーマネジメントには、住宅単位で電力需要・PV出力を予測し、住宅エネルギー設備の最適な運転パターンを計画する必要がある。しかしながら、生活行動や天候といった不確実性に対して住宅電力需要・PV出力を適切に予測する手法はいまだ確立していない。本研究は、生活行動や天候といった不確実性に対して住宅電力需要・PV出力を適切に予測する手法の開発を目的とする。 初年度は、住宅電力需要・PV出力を高精度で予測可能なモデルを構築するために、近年急速に一般化しつつある機械学習手法である深層学習の実装を開始した。深層学習の実装に当たってGoogleが無償公開している機械学習用ライブラリー「TensorFlow」を利用し、手書き文字を高精度で判別する多層パーセプトロン構造の深層学習アルゴリズムを数値予測ができように改良した。改良した予測モデルの精度を確認するために、戸建住宅における電力需要の予測を試みた。日時・曜日・平休日フラグ・天候情報(気象庁の気温・日射量)を入力データとして、住宅電力需要1時間値を24時間先まで予測し、精度を検証した。検証の結果、既往研究が提案している手法と同程度の予測精度を有することを示し、入力データやモデル構造の改良によって更なる精度向上ができることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究実施に当たって、①学習用データセットの整備、②予測モデルの構築、③予測結果の検証、という3つのフェーズを設定しており、交付申請書においては①学習用データセットの整備を初年度から、②予測モデルの構築と③予測結果の検証を2年目からの研究課題としている。 ①学習用データセットの整備について、住宅メーカーの協力のもとで国内HEMSデータのサンプルの提供を受けて、学習用データセットの試作版を整備した。データセットの整備が順調に進んだため、②予測モデルの構築と③予測結果の検証を前倒しして実施し、深層学習手法が住宅電力需要予測に適用可能であることを確認した。このように、本研究は当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
①学習用データセットの整備については、引き続き住宅メーカーから国内HEMSデータの提供を受け、様々な属性の住宅を対象としたデータセットを整備する。 ②予測モデルの構築と③予測結果の検証については、入力データやモデル構造の改良を実施し更なる精度向上の可能性を検討する。入力データに関しては、HEMSデータに基づく生活行動パターンの推定手法を需要予測に応用し、生活行動の周期性が考慮できるような改良を行う。モデルについては、より複雑な構造を有する深層学習アルゴリズムを実装し、予測精度の向上を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
交付申請書においては初年度に住宅メーカーからの国内HEMSデータ提供を完了する予定であったが、データ提供を受けるための手続きに時間を要することが判明したために、初年度はサンプルのみの提供とし、本格的なデータ提供は次年度以降に実施することとした。以上の理由で発生した次年度使用額に関して、引き続き住宅メーカーから国内HEMSデータの提供を受けるための予算として使用する予定である。
|