本研究ではクラスターサイズ(構成原子数)が数千のサイズ領域において、イオン移動度質量分析法を用いて炭素ナノオニオンを含む炭素原子のみで構成される炭素クラスターイオンの構造異性体を探索することを目標としていた。炭素ナノオニオンと呼ばれる複数の層からなる多層フラーレンは、ナノ粒子の領域に手研究対象とされる炭素同位体の一種である。炭素ナノオニオンは主に透過型電子顕微鏡を用いて観測されてきたため、サイズの見積はあいまいな点があったが、本手法では質量分析法を用いてサイズを議論することができるという長所がある。このクラスターとナノ粒子の中間領域といえるサイズ領域にてどのようなサイズのフラーレンの組み合わせがあるのか。また、それはどのような成長過程を取っているのか。といった観点から研究を進めていた。 以前まではサイズ範囲が100から800程度まで観測していたが、本研究にてクラスター生成部及び観測部の改良を行った結果サイズ1500程度の領域まで炭素クラスターを観測できるようになった。しかしながら期待していた新しい系列の観測には至らなかった。 そのため、炭素クラスターの実験と並行し、新しい系としてフラーレンと同様に中空のかご型構造を作ることが最近分かってきたホウ素クラスターを対象とし、ホウ素クラスターイオンの構造異性体の探索を行った。原子番号5のホウ素は価電子が3つありそれら3つの価電子を1つずつ用いて共有結合を3つ作っただけでは閉殻にならない。そのため、多中心結合を作ることによりこの問題を解決していると考えられている。そのため、他の単体クラスターでは見られない特徴を持つことが期待される。実験の結果、ある程度のサイズ領域まで観測でき、今まで報告されていない構造の存在が示唆された。
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