研究課題/領域番号 |
18K14177
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新家 寛正 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40768983)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キラル結晶化 / 表面プラズモン共鳴 / Optical Chirality / バンドギャップ / 光圧 / 金属ナノ周期構造体 / キラリティ / 二次核生成 |
研究実績の概要 |
本研究では、電磁場のキラリティに関する新しい保存量「Optical Chirality」の増強されたキラルな表面プラズモン近接場を高度に設計し、その場の中でキラ ル結晶化を誘起することで高い結晶鏡像異性過剰率を達成し、Optical Chiralityの物質系への転写を実験的に確かめることを目的としている。具体的には、キラル金属ナノ周期構造体で形成されるプラズモニックバンドギャップのバンド端周波数の光で励起される群速度の小さな“遅い”キラルプラズモンを生成し、キラルな光-物質相互作用の増強を図ることで高い結晶鏡像異性過剰率を達成することを本年度の目的としている。 本年度は以下に示す実績が得られた。 1)昨年度の研究において、キラル金属ナノ周期構造体へ近赤外集光レーザー照射することで発生する表面プラズモン近接場の電場勾配により、水溶液中のアセトアミノフェン分子を近接場中に捕捉・濃集し結晶化を制御するプラズモン光学捕捉誘起結晶化を実験的に観測した。本年度は、FDTD法に基づいて金属ナノ構造体近傍の電磁場の数値解析を行い、実験結果を良く再現することを確かめ、プラズモン光学捕捉誘起結晶化現象を裏付けた。この一連の成果をまとめ、Crystal Growth and Design誌に報告した。この成果は近接場中でのキラル核形成誘起の方法確立の足掛かりとなる。 2)昨年度の研究において、キラル結晶化する塩素酸ナトリウム水溶液を支持した金属ナノ構造体へ可視集光レーザー照射すると、プラズモン加熱に伴う微小領域水溶液攪拌により溶液中に最初に現れた母結晶の利き手を継承する二次核の生成が促進され100%に近い鏡像異性過剰率が得られることを明らかにした。本年度はこの成果をまとめ、Crystal Growth and Design誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
異動に伴う研究環境の再整備が主な理由となり、研究の進捗が当初の計画よりも遅れている。当初、本年度に近接場中での核形成誘起の実験スキームを確立しその上でキラル結晶化における鏡像異性過剰を評価する計画であったが、実際の進捗は近接場中での核形成誘起の成功に留まっており確立にも至っていない。次年度におけるOptical Chiralityの物質系への転写実験の計画は、本年度計画実験において十分な鏡像異性過剰を観測したという前提のもと成されているため、研究計画全体の第一歩を完了したという状況である。そのため、現在までの進捗状況は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績1)に示した近接場誘起核形成実験系をキラル結晶化する化合物に適用し、その鏡像異性過剰率を評価する。その後、プラズモン周期構造体の詳細な解析、具体的には、紫外可視吸光測定及びFDTD数値計算による電磁場解析により周期構造体のバンド構造の予測及びバンド端周波数の特定を行い、その周波数に合わせた波長を持つ励起光により同様の実験を行い鏡像異性過剰率を評価し、比較する。上記2つの実験において十分な鏡像異性過剰率が観測された場合には、Optical Chirality転写実験へ移行するが、観測されなかった場合には、計画を変更し、鏡像異性過剰が観測される条件を探索する。具体的な条件としては、金属ナノ構造体間のギャップサイズ、ナノ構造体の材質(金属にかわり誘電体の検討)、構造体の形等々が挙げられる。条件探索後、十分な鏡像異性過剰がみられた場合には転写実験へと移行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
支出計画当初予定していた波長可変光源について、仕様変更の上光源を購入したため予定よりも安価に入手することができたため。
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