研究課題/領域番号 |
18K14179
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中農 浩史 京都大学, 工学研究科, 助教 (20711790)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電極電解液界面 / 電子移動 / 分子動力学シミュレーション / 化学ポテンシャル / 電子カップリング / QM/MM |
研究実績の概要 |
(1)昨年度に開発した、電解質溶液と相互作用する電極を記述するための、化学ポテンシャル平衡法による方法を発展させた。計算コストが極めて低くて済む古典的な扱いにも拘わらず、電極電子の化学ポテンシャルを自然に導入出来ることを示した。これにより、電極電解液界面で起こる酸化還元反応(電極と酸化還元体間の電子移動)の熱力学的・速度論的な議論が古典分子動力学シミュレーションの枠組みで、従来の手法より明快な形で議論できるようになった。この手法は更に電極と電解質溶液溶媒分子の双方が電子分極可能なため、電荷分布が大きく変化する酸化還元反応を正しくモデル化し解析出来る。この方法を用いて、電極電解液界面での電子分極効果の役割と、電子移動反応に対する界面の応答の線形性を明らかにした。 (2)ドナー・ブリッジ・アクセプター(D-B-A)分子系においてsuperexchange機構で起こる電子移動の速度定数を決定する重要な因子である実効電子カップリングを、第一原理量子化学計算によって曖昧さなく、かつ効率よく正確に評価出来る手法を完成させた。この手法は表面修飾された電極と酸化還元体間の電子移動の解析への重要な足掛かりとなる。 (3)電極と電解液は上記(1)の方法で記述し酸化還元体は量子化学的に扱う、電極電解液界面の新規QM/MM法の開発と計算が、もうすぐ完了するところまで進められた。 (4)上記(3)に加えて電極も量子化学的に扱う更に発展的な手法を、Rutgers大学M. Pavanello博士と共同で開発を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の遅れが影響したためと、より優れた方法を開発するために、当初予定していなかったM. Pavanello博士との共同研究を開始したからである。
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今後の研究の推進方策 |
電極電解液界面で起こる化学反応、特に酸化還元反応を扱うための新規QM/MM法の開発を完成させる。また電子カップリングを評価する手法をより発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予期していなかった海外での共同研究開始による渡航費・滞在費の発生と、それによる予算使用用途の変更のため。
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