研究課題
界面におけるフォトクロミック反応のダイナミクスの解明を目的として、フェムト秒の時間分解能をもつ時間分解電子和周波発生分光装置の開発とそれを用いた電子状態ダイナミクスの研究を推進してきた。実験装置の開発については一昨年度までに完了していたが、昨年度の終盤に研究代表者の所属研究室のフェムト秒レーザー光源が故障し、今年度の12月まで測定が難しい状況が続いていたため、時間分解赤外吸収分光やフェムト秒誘導ラマン分光の各種時間分解振動分光法を用いたフォトクロミック分子系の選定と、光劣化の影響を抑えながら測定を行うための試料供給システム(フローセル、回転ステージ)の改良を継続して行った。典型的なジアリールエテン誘導体の開環反応ダイナミクスを対象として、時間分解赤外吸収分光を行ったところ、紫外可視域の過渡吸収分光測定から得られていた時定数と同様の時定数で、光生成物である開環体が生成する様子が観測された。また、赤外分光と選択則の観点から相補的な情報を与える時間分解誘導ラマン分光法も併用して試料系のスクリーニングを行うため、この分光手法のセットアップも構築し準備を整えた。以上のように、バルク溶液中のフォトクロミック分子系については、従来の過渡吸収分光によるキャラクタリゼーションをこえる構造情報を取得し、本研究の測定と相補的なバルク溶液中のダイナミクスの情報は十分得られ、これらの知見は論文化まで漕ぎ着けている。今後は、復旧したフェムト秒レーザー光源を用いて、上記の選抜したフォトクロミック分子系について界面における光異性化ダイナミクスの観測を行う予定である。
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