研究課題/領域番号 |
18K14186
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西 弘泰 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70714137)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 化合物半導体 / ナノ粒子 / プラズモン共鳴 / プラズモン誘起電荷分離 / 光電気化学 |
研究実績の概要 |
プラズモン誘起電荷分離(PICS)現象は、これまで主に貴金属ナノ粒子を用いた系で研究されてきた。一方、一部の化合物半導体ナノ粒子が近赤外領域にプラズモン共鳴を示すことが近年報告されており、貴金属ナノ粒子の代替材料として注目されている。そこで本研究では、化合物半導体ナノ粒子を用いたPICSを実現し、新しいPICS系の構築することを目指している。 2018年度は、酸化チタン電極と近赤外領域でプラズモン共鳴を示す酸化インジウムスズ(ITO)ナノ粒子と銀対極で構成される固体セルを作製し、そこに近赤外光を照射することで、PICSに基づく光電流および光起電力を観測することに成功した。電流の極性や光電流作用スペクトルの形状などから、ITOナノ粒子内の電子がプラズモン共鳴によって励起され、酸化チタンの伝導帯へと注入される電子注入型のPICSが起こっていることが明らかとなった。 一方で、化合物半導体ナノ粒子を用いたPICSにおける粒子サイズ依存性を検討する予備実験として、サイズの大きい金属ナノ粒子を用いた実験を行っていたところ、高次のプラズモン共鳴モードがPICSにおいて高い内部量子収率を示す可能性が示唆された。さらに、粒径約150ナノメートルの金ナノ粒子が、担持される誘電体層の膜厚に依存して指向性のある多色散乱を示すことが見出された。 以上のように、化合物半導体ナノ粒子を用いたPICS系を実現できただけでなく、金属ナノ粒子を用いたPICSにおける高次のプラズモン共鳴モードの影響や、新しい金属ナノ粒子の応用を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である化合物半導体ナノ粒子によるPICSを、ITOナノ粒子と酸化チタンを組み合わせた系で実現できた。他の化合物半導体ナノ粒子を用いた系についても現在検討を行っており、今後の展開が期待できる。また、研究を進めていく中で、金属ナノ粒子を用いたPICSにおける新しい知見や、同ナノ粒子の新しい応用も見出した。以上の点から、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の対象を拡張するため、ITOナノ粒子以外の化合物半導体ナノ粒子を用いたPICSの実現を目指す。特に、可視領域でプラズモン共鳴を示すことが明らかになっている化合物半導体ナノ粒子や、p型化合物半導体ナノ粒子を用いた系を中心に検討を行う。ナノ粒子と組み合わせる半導体についても、酸化チタン以外の材料をバンド構造を考慮しつつ検討する。その後、当初の予定通り、化合物半導体ナノ粒子と金属を組み合わせた系でPICSに基づく光電流および光起電力の観測を試みる。高次のプラズモンモードの影響については、金属ナノ粒子を用いた系で詳細に検討を行い、その知見を化合物半導体ナノ粒子を用いた系に適用することで、PICS効率の改善等に利用する。
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