研究課題/領域番号 |
18K14188
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
本林 健太 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60609600)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イオン液体 / 二酸化炭素還元 / 分光電気化学 / 表面増強赤外吸収分光法 |
研究実績の概要 |
イオン液体中の金電極の表面で進行するCO2還元反応のメカニズムの解明を試みた。本年度は、昨年検討を行った[C4mim][BF4]と比べて、電極界面に形成する界面構造の電位応答性が異なる[C4mim][TFSA]に着目した。電位に応じて正負のイオンがスムーズに入れ替わる[C4mim][BF4]に対して、[C4mim][TFSA]では入れ替わりに活性化障壁が存在し、ある一定のしきい値電位を境に正負イオンの入れ替わりが開始する。この界面構造の違いが、CO2還元反応のメカニズムにどう影響するかを検討した。実験は、表面増強赤外吸収分光(SEIRAS)と電気化学を組み合わせることで、電極界面におけるイオン液体及び中間体の構造と反応速度の同時観測を行い、両者の関係について検討した。 昨年検討した[C4mim][BF4]同様、[C4mim][TFSA]中においても、[C4mim]カチオンとCO2が結合したcarbonyl種が、CO2の還元とともに電極表面で生成することが、SEIEASにより観測された。過去の文献にて、carbonyl種が生成する電位では、さらに1電子還元することでCOが生成する反応が有利であることが、量子化学計算により示されている。したがって、carbonyl種が反応中間体であり、その安定性がイオン液体中における過電圧低下の原因である可能性を指摘した。 また、イオン液体の界面構造に着目すると、電極第1層がアニオンから[C4mim]カチオンに入れ替わり始める電位が、CO2還元の開始電位と一致していることが、SEIRAS観測により判明した。この結果は、[C4mim]カチオンの電極への接近が反応に不可欠であることを示唆している。上記のcarbonyl種が反応中間体であることによって矛盾なく説明できる結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
含水イオン液体中におけるCO2還元反応のメカニズムの一部の解明に成功した。反応経路の情報は、より過電圧が小さくなるようなイオン液体の設計に役立つ知見と言える。
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今後の研究の推進方策 |
現状では量子化学計算の結果を参考にcarbonyl種が中間体であることを推測している。これを実験的に示すため、イオン液体のカチオンの種類を変えながら同様の測定を行う。また、中間体がより安定となるようなイオン液体の設計に挑む。
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次年度使用額が生じた理由 |
別の研究テーマにより獲得した民間の研究助成金にて購入した試薬などの消耗品の余りを本研究課題でも使用できた。これにより浮いた予算が次年度使用額となった。 当初計画に計上したが減額により購入を見送る予定だった、反応生成物の同定に必要な設備備品の購入に、充当する予定である。
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