本研究では、高効率で光を吸収する光捕集アンテナを合成し、その内部に光機能性分子を取り込んだ超分子複合体によって、光エネルギーの捕集・集約・変換を目的とした。光捕集アンテナとして、シクロデキストリンや有機ケージなどのホスト分子に、複数の有機色素を修飾した分子を設計した。これらにエオシンなどの有機光触媒を内包することで、捕捉した光エネルギーの集約および変換を実現する。これらを光触媒や増感剤として利用し、人工光合成の効率改善などエネルギー分野への応用を目指した。 光捕集超分子を構築するためのシクロデキストリンおよびケージ型のホスト分子の合成し、光物性を明らかにすることに成功した。シクロデキストリン化合物の合成は、アミンとカルボン酸の縮合反応によって非常に簡便に合成することができた。ケージ型の分子についても、効率良く合成できるルートを確立することができた。それぞれの分子は反応点が多く、多くの副生成物が生じるために化合物の精製に困難があったものの、最終的には優れた収率で目的物が得られた。アントラセン、ピレン、トリフェニレンおよびペリレンなど多環芳香族化合物およびクマリンを修飾した光捕集アンテナを用意することができた。これらの基礎的な光物性を評価した結果、優れた光捕集能を有していることを明らかとなった。一部のシクロデキストリン型の光捕集アンテナについては、色素の凝集に由来する消光現象も確認された。一方で、ケージ型光捕集アンテナについては色素間に適切な距離を有しており、消光はほとんど見られなかった。また、光捕集アンテナのみでも高い異方性を有する円偏光発光特性などの特徴が明らかとなった。
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