π共役分子はπ電子系による多様な性質を発現しうるため、近年ますます注目を集めている。その中でもポルフィリンとヘテロールは、どちらも機能性材料の開発において中心的な骨格として注目されているが、これらを組み合わせた系を構築する、という研究はほとんど検討されてこなかった。そこで本研究では、ポルフィリンとヘテロールを組み合わせ、双方の物性をあわせ持つ化合物の創製とその物性の解明を目的とし、検討を行った。 まず、アルキニルポルフィリンに対する[2+2+1]付加環化反応により、新規ホスホール縮環ポルフィリンの合成に成功した。この分子は、ホスホール骨格がもつリン原子の酸化状態を変化させることにより、分子全体の性質を変化させることができるだけでなく、ホスホールに由来する高い電子受容性を持ち、ポルフィリンとホスホールの特徴を兼ね備えていることを明らかにした。加えて、新規チオフェン縮環ポルフィリンを合成にも成功し、チオフェンのドナー性を活用することで、色素増感太陽電池における高効率色素となることも見出した。特に、チオフェン縮環ポルフィリン色素は、現在世界最高のエネルギー変換効率を達成している色素に匹敵する太陽電池性能を実現し、ポルフィリン色素を用いた色素増感太陽電池のさらなる性能向上に繋がる結果と言える。 また、過去に報告している、チオフェンとホスホール両方の特徴を兼ね備えているチオフェン縮環ホスホールに、電子供与性・求引性置換基を適切な位置に導入することで、チオフェンあるいはホスホールとしての性質をコントロールすることに成功した。
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