研究課題/領域番号 |
18K14202
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松井 康哲 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90709586)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フォトンアップコンバージョン / エネルギー移動 / 三重項ー三重項消滅 / 光波長変換 |
研究実績の概要 |
ジフェニルアントラセンを非共役リンカーで連結したダイアドを4種類合成し,それらの物性評価を行った.その結果,吸収スペクトル・蛍光スペクトル・蛍光寿命・蛍光量子収率は対応するモノマーとほとんど同じであり,モノマーの電子状態を維持していることが示唆された.一方,燐光消光実験を行うと,ダイアドではより高い消光速度定数が得られ,いち粒子としての挙動は同じであるが,エネルギー移動に対する有効半径が大きいことが示唆された.加えて,ダイアド系にすることで三重項寿命が伸びることが実験的に示唆されており,アップコンバージョン効率の向上が期待された. また,白金ポルフィリンと種々のダイアドを溶解させた溶液では,アップコンバージョン発光が観測された.詳細な特性評価を行う光学系を構築中であり,引き続き評価を進める. 定常状態近似を用いて励起状態種の濃度推定を行ったところ,溶液中における励起状態種は0.1uM程度であり,仕込み濃度の1/1000程度であることが示唆された.この数値から,分子間TTAと分子内TTAの競争が想定され,正味のアップコンバージョン効率向上に寄与するものと考えられた. これらの成果は国内外の学会にて発表したほか,英語論文を投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジフェニルアントラセンを非共役リンカーで連結したダイアドを当初の計画通り4種類合成し,それらのアップコンバージョン特性の評価を行うことができた. アップコンバージョン発光に対する励起光強度の効果を検討する光学系を構築中であり,それらを用いて二年目に評価を進めていく. 定常状態近似法を用いて,励起状態種の濃度推定を行ったところ,溶液中における励起状態種は0.1uM程度であり,仕込み濃度の1/1000程度であることが示された.この数値から,分子間TTAと分子内TTAの競争が想定され,正味のアップコンバージョン効率向上に寄与するものと考えられたため,おおむね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
初年度まではアクセプターとしてジフェニルアントラセンを選択しており,緑から青へのアップコンバージョンを計画していたが,鈴木宮浦カップリング反応等により種々のアクセプターを連結したダイアドを合成する.それにより,近赤外から可視光,青色から紫外などの様々なアップコンバージョン系の構築を検討する. また,相互作用を左右する非共役リンカーの選択について,量子化学計算を用いた交換相互作用の定量化を行い,適切な分子配置についてさらなる検討を進める. 固体系でのアップコンバージョンの実現を目的として実験を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はナノ秒パルスレーザー(約200万円)を新規に購入して光学系を構築する予定であったが,充足率の不足により購入を見送った.本研究で使用可能なナノ秒パルスレーザーを望外にも他の予算で購入することができたため,一部予算を2年目に繰越し,可変NDフィルター等を購入して光学系の構築を進める予定である.
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