研究課題
2019年度は,ジフェニルアントラセンを連結した新規ダイアド分子,およびテトラセンを連結した分子の合成を行ったほか,前年までに合成したダイアド分子の三重項-三重項消滅アップコンバージョン(TTA-UC)挙動の評価を行った.特に,定常光レーザーを用いた新規光学系を構築し,TTA-UCに対する励起光強度の影響について溶液系において検討を行った.アダマンタン連結ダイアド分子について,TTA-UCにおける重要な指標であるしきい励起光強度を算出した.しきい励起光強度とは,弱い励起光で高いアップコンバージョン効率を示すことを評価する指標である.その結果,対応するモノマーより少し高い値となった.主たる要因として,ダイアド化がTTAにおける一重項の選択性を低下させたことが考えられ,詳細な原因を検討中である.本研究で提案した分子内TTAの進行を支持する結果でもあり,将来的に一重項の選択性の高いダイアドを合成できれば画期的である.これらのデータをまとめ,学会発表を行ったほか,英文報告を1報発表した.また,テトラセンをアダマンタンで連結した分子を合成したところ,TTAの逆過程である分子内一重項分裂の進行を確認した.ダイアド化により長寿命の三重項励起子が生成することも明らかとなり,アップコンバージョンの検討においても有効な戦略であることが支持された.この成果についても英文報告を1報発表した.今後は,固体状態におけるアップコンバージョンや,励起エネルギー変換を志向して研究を展開する予定である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (56件) (うち国際学会 11件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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