研究課題
本研究では、高周期14族元素を骨格に含むジアニオン性反芳香族化合物の合成を目指し、た。これまでに高周期14族元素を骨格に含む反芳香族化合物の合成研究は、シクロブタジエンの系に限られていたので、本研究ではシクロヘプタトリエニルアニオンに着目し、その高周期類縁体を合成し、その反芳香族性を調査した。昨年度の研究において、既にジベンゾスタンネピンのモノアニオン種の合成・単離に成功し、これが非芳香族化合物であることを明らかにしている。また、興味深いことに、さらに還元反応が進行したジアニオン種が生成していることが、捕捉実験により明らかとなった。そのジアニオン種は熱力学的に不安定であり容易に分解してしまうことから、現在までのところそのNMRやX線結晶構造解析には至っていないが、理論計算によりこのジアニオン種が反芳香族性を有することが示唆された。今年度の研究では、関連したジアニオン種の単離を目指し、よりπ共役系が拡張された系で研究を行った。すなわち、ナフタレンで縮環されたスタンナシクロヘプタトリエンを設計し、それをジアニオン種へと誘導することとした。ジベンゾの系ではまずスズ上に2つのフェニル基をもつスタンネピンを合成し、その還元を行ったが、ナフト縮環の系ではスズ上のフェニル基と縮環したナフタレンとの間の立体反発によりスズ上にPh基を2つある状態での七員環形成は困難であった。そこで、スズの原料を4価から2価に変更し、再度七員環形成反応を行った。その結果、目的の七員環形成に成功したものの、得られた化合物は2価のスズが自己四量化したテトラスタンナシクロブタンであった。このスズ四員環化合物を過剰量のアルカリ金属で還元を行ったところ、溶液は黄色から青紫色へと変化し、NMRから目的のジアニオン種の生成が示唆された。現在、そのジアニオン種の単離を目指している。
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Organometallics
巻: 39 ページ: 640-644
10.1021/acs.organomet.0c00042
巻: 39 ページ: 711-718
10.1021/acs.organomet.9b00856