研究実績の概要 |
テルロフェンはチオフェン類よりも高い導電性や電子移動度を有することから、電子材料への応用が期待されている分子である。しかしながら、その合成法上の理由でβ位への置換基導入が困難である。そこでβ位に置換基を有するテルロフェンのモジュラー合成法の開発を本研究課題に設定した。高効率での複素環合成が可能な[3+2]環化付加反応に着目し、1,3-双極子剤の含テルルヘテロクムレン、ビス(メチレン)テラン, >C=Te=C<と、求双極子剤のアセチレン類, R-C≡CR’を反応させることで、位置選択的に多様な置換基が導入可能と考えた。ビス(メチレン)テランの硫黄やセレン類縁体は合成・単離が可能であり、1,3-双極子剤として良好な反応性を示す。そこで、新規ヘテロクムレン類のビス(メチレン)テランをテルロフェン合成のビルディングブロックとして活用するために、合成・単離を行い、その構造や物性を調査する。その結果を鑑み、多置換テルロフェン合成へとつなげる。 2018年度は、ビス(メチレン)テランの合成検討を行うとともに、ビス(メチレン)スルファンおよびセランの反応性の調査を検討した。ビス(メチレン)スルファンではその安定性や置換基のかさ高さから前述したような1,3-双極子型の反応は進行しなかった。2019年度は、引き続きビス(メチレン)セランの反応性を検討したところ、塩化水素やハロゲン化試剤との反応において1,3-付加した生成物が定量的に得られることがわかった。これらのことより、中心元素を高周期元素に置き換えることで反応性が向上することがわかった。また塩化金(I)ジメチルスルフィド錯体との反応では、特異な反応を起こし、(シリル)(チオ)および(シリル)(セレノ)カルベン金(I)錯体をそれぞれ与えた。
|