研究課題/領域番号 |
18K14207
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 洋平 北海道大学, 理学研究院, 講師 (60609816)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カルボン酸 / ホウ素触媒 / 光酸化還元触媒 / ラジカル / アリル化 / 配位子 |
研究実績の概要 |
これまでに研究を進めてきたホウ素触媒によるカルボン酸エノラートの生成法を基盤として、光酸化還元触媒と組み合わせたカルボン酸α位ラジカルを活性種とした新たな反応開発を検討した。 ホウ素活性化剤を1当量用いる条件にて、Irを金属中心とする光触媒を検討したところカルボン酸α位におけるアリル化反応が進行することを見出した。アリルスルホンをアリル化剤として用いることで、分子間で反応が進行する。さらに、ホウ素活性化剤を触媒量に減じても、同等の効率で生成物を与えることが分かった。なお、光源として青色のLEDを用いているが、その光源の強さも収率に影響を与えている。 さらに、ホウ素触媒上に種々の配位子を導入して検討を行ったところ、配位子の構造が反応性に大きく影響することを確認した。現段階ではBINOL型の配位子が有効である。最適化の途上ではあるが、初期的な基質の適用範囲を検討したところ、3級炭素構築型のカルボン酸のみならず、4級炭素構築型のカルボン酸も基質として適用できることを確かめている。また、エステル、ケトン存在下にもカルボン酸α位のみで反応が進行するという、これまでのホウ素触媒系と同様の利点も備えている。 反応メカニズムに関する知見を得るべく、光源のON/OFF実験をNMRチューブ内で追跡したところ、本反応は、暗条件では進行せず、光照射の間のみ反応が進行していることが確認された。すなわち、継続的な光照射によるラジカル生成が重要であり、ラジカル連鎖反応ではないことが強く示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分子内反応の検討を経て、2年目に分子間反応へと挑戦する計画であったが、すでに分子間反応へ適用できることを確かめている。また、配位子が反応性の向上に効果があるため、不斉配位子の導入によって不斉反応へと展開する足場が固まったと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ホウ素上の配位子を不斉配位子として、立体選択的反応への検討を進める。また、反応性も十分ではないため、配位子の構造、アリルスルホンの構造を中心に検討を進め、収率の向上を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
多種類の光触媒の購入・検討を計画していたが、初期的な検討で反応が進行する触媒を見出すことができた。今年度は、これを用いた検討を中心に行っていたため、ほかの光触媒を購入する必要がなかった。 31年度は、改めて光触媒の広範な検討を行うため、その購入に充てる。また、不斉反応の検討を行うため、キラルHPLCカラムを購入する。
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