平成31年度(令和元年度)では,昨年度に見出した金属間化合物PdIn電極触媒について,電気化学特性の検討および構造解析を実施した. まず,CO2分圧依存およびメタン生成活性を調べた.CO2分圧の増加に伴いPd電極のCO生成活性は徐々に低下したが,PdIn電極の活性はCO2分圧にほぼ1次の相関を示した.これは,金属間化合物形成によってCO被毒耐性が向上したためであると考えられ,高圧条件での高効率CO2電解に応用できる特性である.一方,水系および非水系電解液における印加電位依存性を検討したが,メタンはほとんど生成しなかった.そのため,当初の目的であった不飽和有機化合物のヒドロメチル化を達成することはできなかった. 次に,PdInの構造解析を実施した.TEMを用いてPdIn電極の粒子・元素分布,格子面間隔を調べた結果,10~20 nm程度の粒径のPdInがケッチェンブラック上に担持されていることがわかった.また,アンダーポテンシャル水素生成やCOストリッピングなどの電気化学的解析により得られた結果は,①Inとの合金化によって粒子表面のPdアンサンブルが減少した,または②数原子層のPdシェルがPdInコアを覆ったコア-シェル構造を有する,ことを示唆した. 以上の結果から,金属間化合物PdIn電極触媒が優れたCO被毒耐性を示した要因は,PdIn電極表面の①Pdアンサンブルの減少(アンサンブル効果)または②Pd-Pd距離の変化(ひずみ効果)であると考えられる.これによりCOの吸着が抑制されたことで,CO2電解還元によるCO生成に対して優れた電極触媒活性が発現したと考えられる.
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