研究課題/領域番号 |
18K14213
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仙波 一彦 京都大学, 工学研究科, 助教 (30712046)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アリルアリール化 / アルケン / 協働触媒作用 |
研究実績の概要 |
本研究では、新たな反応機構に基づくアルケンのカルボホウ素化反応の開発を目的としている。本年度は、beta-ホウ素脱離を利用するアルケニルホウ素化合物によるアルケンの直截カルボホウ素化反応の開発に取り組んだ。本反応の触媒として、第10族遷移金属メタラサイクル錯体が有効であると考え、PとCまたはNとCを配位元素とするパラダサイクルおよびニッケラサイクルを合成した。目的反応には、有機ホウ素化合物からメタラサイクル錯体への有機基の移動(トランスメタル化)の過程を含むため、本過程が進行するかを電子不足アルケンへの有機ボロン酸エステルの共役付加により検証した。パラダサイクルおよびニッケラサイクルのいずれも共役付加反応が進行したことから、有機ボロン酸エステルとのトランスメタル化が可能であることが分かった。ニッケラサイクルを触媒とする共役付加反応は前例が無い。また、ニッケルは従来良く用いられるロジウム触媒に比べ豊富に存在する元素であるため、本知見は重要である。また、パラダサイクルによる共役付加によって生成するパラジウムエノラート求核剤が、0価パラジウムのアリル炭酸メチルへの酸化的付加によって生成するアリルパラジウム求電子剤と反応することを見出し、それを利用することで、電子不足アルケンのアリルアリール化を実現した。二種類のパラジウム錯体の協働触媒系はユニークであり、本結果は、近年盛んに研究されている二種類の遷移金属協働触媒による反応開発に重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の過程で、パラダサイクルとニッケラサイクルによる触媒反応を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
合成したパラダサイクルおよびニッケラサイクルを用いて、beta-ホウ素脱離を利用するアルケニルホウ素化合物によるアルケンの直截カルボホウ素化反応開発に取り組む。また、本年度見出したニッケラサイクルによるアリールボロン酸エステルの共役付加反応に関する論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
beta-ホウ素脱離を利用するアルケニルホウ素化合物によるアルケンの直截カルボホウ素化反応開発の過程で見つけた、ニッケラサイクル触媒による有機ボロン酸エステルの電子不足アルケンへの共役付加反応を調査するため。また、合成したメタラサイクル錯体によるアルケンの直截カルボホウ素化反応を引き続き検討するため。
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