研究課題/領域番号 |
18K14215
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩本 貴寛 京都大学, 化学研究所, 特定助教 (50735355)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光触媒 / 相間移動触媒 / ハロゲン化 |
研究実績の概要 |
本研究は,光エネルギーを駆動力として塩化ナトリウムを塩素源とする塩素化法の開発を行うものであり,究極的には塩素化合物生産に必要なエネルギーを削減し,持続可能な社会に資する次世代有機合成化学の確立に貢献することを目指した。 目的の反応を実現するために,光触媒能と相関移動能を併せ持つ相間移動型光触媒を着想した。今年度は本触媒設計指針の妥当性を明らかにするために,まず臭化カリウムによる臭素化反応において多様な相間移動型光触媒の検討を行った。その結果,芳香族臭素化反応が最大99%収率で進行すること,また本反応には光触媒能と相関移動能を併せ持つ触媒が優れていることを明らかにし,本触媒設計指針の妥当性が実証された。一方で,(1)電子不足芳香族化合物では反応速度が遅く収率の低下が見られること,(2)触媒量を減らすと収率の低下が見られ触媒回転数が低いことが分かった。(1)に関しては,電子不足芳香環では酸化が起こりにくいことが要因であると考えており,理論計算による電子状態解析を基に触媒の酸化還元能をチューニングすることで解決できると考えている。(2)に関しては,反応後の触媒構造の解析から,反応系中で触媒が失活しておりこれが低い回転数の要因であることが分かった。また,失活した触媒を同定し,失活過程をおおよそ明らかにすることが出来ている。今後は本失活過程を防ぐことで触媒量の低減に繋がると考えており,今後の触媒設計に関する重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル反応において,本研究の鍵となる触媒設計指針の妥当性を実証することが出来た。さらに,上述のとおり触媒の失活過程に関する知見も得られ,今後の触媒構造のチューニングに繋がる結果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,触媒の活性および安定性の向上を目指した更なる最適化を検討する。特に,上述の触媒活性と安定性の向上に加えて,光触媒としての機能に焦点を当て,共同研究を通して励起状態の分子挙動を明らかにし,量子収率の向上や可視光応答性の付与などを目指す。その後,目的の塩化ナトリウムによる塩素化反応への展開を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況に問題は無いものの,計画立案当初には想定していなかった実験結果が得られたため,物品費と旅費に変更が生じた。それに応じて,次年度の物品費と旅費に必要な経費が増えると考え,当該年度経費から一部を次年度経費に繰り越した。
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