研究実績の概要 |
安価で入手容易なキラル源であるBINOLとケイ素試薬を用いて、様々なキラルケイ素触媒の設計・合成を行った。特に、これまで報告例のないケイ素と炭素、酸素からなるクラウンエーテル触媒をグリシンシッフ塩基のアルキル化反応の相間移動触媒として用いたところ、炭素と酸素から形成される同様の触媒に比べ、高いエナンチオ選択性を示すことが明らかになった。現在、さらなるエナンチオ選択性の向上を目指し、反応条件の最適化を行うとともに、触媒ライブラリーを充実させている(論文投稿準備中)。炭素と酸素から構成されるクラウンエーテルに比べ、エナンチオ選択性が向上した理由として、ケイ素の高いルイス酸性度がクラウンエーテル上の酸素部位とゲスト金属との相互作用形式を変化させたためであると考えられる。本触媒を見出す過程で合成したアゾベンゼンを含むBINOLークラウンエーテルも同様に高いエナンチオ選択性を示した。本触媒は光の波長によるアゾベンゼンの構造変化によってクラウンエーテルの環構造を変化させることで、反応性を切り替えることが可能である(ACS Catal. 2021, 11, 1863)。また、2019年度に検討を行ったルイス酸(ケイ素およびホウ素触媒)による不斉Pictet-Spengler反応の知見を利用して、トリプタミン類の不斉Pictet-Spengler反応/酸化的転位反応の連続反応によって、光学活性なスピロオキシインドール類を効率的に合成する手法を見出した(Adv. Synth. Catal. 2021, in press, doi: 10.1002/adsc.202001472)。
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