従来、ヘテロヘリセン合成は、もっぱら「分子歪みが大きくラセミ化しない」ものを標的とし、「分子歪みの小さいアキラルな非環式基質」を環化させる方法をとっていた。しかし、この手法は、分子歪みの上昇に打ち勝つために高い反応温度など厳しい環化反応条件を必要とするため、立体化学制御が極めて難しいという課題があった。これに対して本手法は、分子歪みが中程度の「動的」ヘテロヘリセンの置換反応によって、分子歪みが増大した「準静的」ヘテロヘリセンを得るというものである。このように、これまでにないヘテロヘリセン類の不斉合成手法の開発に取り組んだものであるという点で、本研究は学術的意義がある。
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