研究課題/領域番号 |
18K14227
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
北村 圭 関西学院大学, 理工学部, 助教 (00756695)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多環芳香族化合物 / ポリアセン / 反応性分子 / イソアセノフラン / 環化付加反応 |
研究実績の概要 |
アセンは複数のベンゼン環が直線状に縮環した構造を持ち,これをモチーフとするπ電子系分子は,構造化学ならびに物性化学をはじめ多くの分野から高い関心を集めている。本研究は,有機デバイス作製を指向したアセン系置換誘導体の量的供給を図り,キノイド型反応性分子を用いる多環構造構築法の開発を目指すものである。これまで,イソベンゾフランの利用を中心とする多環芳香族化合物の合成を行ってきたが,今年度は縮環数の伸長したイソアセノフランを新規合成ブロックとして活用することを念頭に,まずはイソナフトフランの発生法を検討した。その結果,置換ナフタレン誘導体への二つのアルキニル基の導入を経て得られるヒドロキシケトンに対して,トリフルオロ酢酸を作用させると,脱水環化反応が進行しイソナフトフランが生成した。これが系内に共存するキノンと環化付加反応を起こし,アセン構造の骨格構築を可能とした。続く官能基化と酸素架橋部位の芳香族化により,置換ペンタセンおよび置換ヘキサセンを系統的に合成することに成功した。このように,高い反応性を持つイソアセノフランを系内で発生する新規手法を見出し,キノン類との環化付加反応により得られる置換ポリアセンの迅速構築法の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,イソナフトフランの系内発生法を見出し,これを反応性分子として用いる多置換ペンタセンへの誘導に成功した。なお,この化合物における多重アルキンの置換基効果により,π共役系の効果的な拡張に加え,有機溶媒中での安定性が向上した。また,求ジエン体として1,4-アントラキノンを用いることで,同様の手法により四つのアルキニル基を持つ置換ヘキサセン誘導体の合成にも成功した。これらの化合物について,X線結晶構造解析とNMRによる構造決定を行い,さらに分光測定および電気化学測定により基本物性を明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の知見を踏まえ,より縮環構造の伸長したイソアセノフランの発生方法を検討し,これを反応性分子として用いる種々のキノンとの反応と官能基化により,多様な置換形式を持つポリアセン誘導体への展開を試みる。また,これまで系内発生により用いてきたイソナフトフランの単離精製法を検討し,その合成的利用の拡大を図る。
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