研究実績の概要 |
若手研究一年目は、オキソバナジウム錯体に着目した『金属中心キラリティー錯体の不斉誘導法の確立』を目指した。 オキソバナジウム錯体は古くから有機合成や反応開発に利用されており、有機化学・生体化学において重要な化学種である。オキソバナジウム錯体は配位子の酸素原子で架橋した二核~多核錯体を形成しやすく、ポリオキソ化体であるPOM錯体は例が多い。それに比べ四面体構造のオキソ金属錯体の合成例は少なく、アキラルな配位子から成る金属中心にキラリティーを有するオキソバナジウム錯体に至っては例がない。従って若手研究一年目は、まず①単核のバナジウム錯体を合成と②動的不斉誘導に焦点を当てて研究を行なった。 ①四面体構造を持つキラルオキソバナジウム錯体の合成検討 アキラルな配位子を有する四面体構造の金属中心キラル錯体を合成するため、様々な二座配位子を新規設計・合成を行い、オキソバナジウム源{VO源 = [VOCl3], [VO(OMe)3], [VO(Oi-Pr)3], [VO(Ot-Bu)3], [VO(OPh)3], [VO(H2O)nSO4], [VO(Phen)2SO4], [VO(acac)2]}との配位子交換反応による錯体の合成検討を行った。o-位にかさ高い置換基を有するビスフェノール型の二座配位子を利用した際、目的の四面体構造を持つオキソバナジウム錯体が得られることが判った。それらの構造・性質は各種NMR測定・分析測定、最終的に単結晶X線構造解析にて明らかにした。 ②キラル補助剤によるオキソバナジウム錯体の動的不斉誘導の検討 合成単離した、アキラルなビスフェノール型の二座配位子を有する四面体構造のオキソバナジウム錯体に対し、キラル補助剤を作用することでキラル制御を試みた。キラル補助剤のキラルメモリーをオキソ金属錯体にインプリンティングすることで、金属中心キラル錯体を選択的に合成を試みた。
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