研究課題/領域番号 |
18K14236
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長田 浩一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (70813830)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金属中心キラリティー / オキソバナジウム錯体 / 動的不斉誘導 / 不斉反応 / アキラルな配位子 / キラル補助剤 |
研究実績の概要 |
若手研究二年目は、『オキソバナジウム錯体の動的不斉誘導法の確立』を目指して研究を行った。 オキソバナジウム錯体は古くから有機合成や反応開発に利用されており、有機化学・生体化学において重要な化学種である。オキソバナジウム錯体は配位子の酸素原子で架橋した二核~多核錯体を形成しやすく、ポリオキソ化体であるPOM錯体は例が多い。それに比べ四面体構造のオキソ金属錯体の合成例は少なく、アキラルな配位子から成る金属中心にキラリティーを有するオキソバナジウム錯体に至っては例がない。 若手研究一年目では、金属中心にのみキラリティーを有する単核のバナジウム錯体を合成をメインに行い、目的のバナジウム錯体の合成に成功した。 若手研究二年目は、キラル補助剤による、オキソバナジウム錯体の動的不斉誘導に焦点を当てて研究を行なった。 ① キラル補助剤によるオキソバナジウム錯体の動的不斉誘導の検討 合成単離した、アキラルなビスフェノール型の二座配位子を有する四面体構造のオキソバナジウム錯体に対し、キラル補助剤を作用することでキラル制御を試みた。キラル補助剤のキラルメモリーをオキソ金属錯体にインプリンティングすることで、金属中心キラル錯体を選択的に合成を試みた。様々なキラル補助剤を検討する中で、オキソバナジウム錯体によるキラルアルコールの転位反応を制御する事で、効率よくキラル誘導することが可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若手研究二年目では、『オキソバナジウム錯体の動的不斉誘導法の確立』を目的に研究を行った。以下に2つの課題を示す。 ①キラル補助剤によるオキソバナジウム錯体の動的不斉誘導の検討 ②キラル補助剤とオキソバナジウム錯体からなるジアステレオマー体の単離と構造決定の検討
①アキラルな配位子からなる金属中心にキラルティーを有するオキソバナジウム錯体に対し、キラルアミン誘導体、キラルプロリン誘導体、キラルアルコール誘導体を検討した。一部キラルアルコール誘導体との検討において、オキソバナジウム錯体によるキラルアルコールの脱水反応が進行し、片側のジアステレオマー体のみが選択的に生成している可能性がNMR測定から明らかとなった。現在は、キラル脱水反応によるキラル転写とキラルアルコール誘導体によるジアステレオ選択性の最適条件の精査を行なっている。 ②ジアステレオ選択性のメカニズムを解明するためジアステレオマー必要がある。キラルアルコールとオキソバナジム錯体からなるジアステレオマー体はNMR観測下では定量的に進行しているものと考えている。2DNMR測定などから、構造の決定を試みるも未だ絶対構造の決定までには至っていない。再結晶による単結晶の作成も同時に行なっているが、未だ得られていない。再結晶条件を精査する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
若手研究二年目では、『オキソバナジウム錯体の動的不斉誘導法の確立』を目的に研究を行った。以下に2つの課題を示す。 ①キラル補助剤によるオキソバナジウム錯体の動的不斉誘導の検討 ②キラル補助剤とオキソバナジウム錯体からなるジアステレオマー体の単離と構造決定の検討 今回の錯体はビスフェノール型の二座配位子のo-位にかさ高い置換基を導入することで、金属中心にキラリティーを導入し、さらに2つの置換基の大きさに差を付けることで、キラル補助剤によるキラル転写が可能であることを突き止めた。しかし、溶液中では置換基が動的過程にあるからか、構造を確定できないことが問題点としてあげられる。この問題点を解決するため二座配位子の再設計を試みる。即ち立体構造に加えて水素結合などの二次的相互作用(キレーション効果)を導入することで、キラル制御の効率化を目指す。具体的には、二座配位子のo-位のtert-ブチル基からホスフィンオキシド基やスルホニル基に変更する。立体構造は差がなく、酸素原子の孤立電子対によるキレーション効果が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりもジアステレオマーバナジウム錯体への不斉誘導化が錯体が不安定であることから困難であったため、誘導法を検討する設備を整える必要が生じた。そのため設備関係の試行錯誤に時間を要したため、2019年度に購入予定であった特殊ガラス器具(真空ライン一式、特殊シュレンク器具など)などを再設計・注文するのが遅れたため次年度に持ち越す必要が生じた。
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