研究課題
若手研究三年目、「四面体型金属中心キラル錯体の動的不斉誘導法の確立」を目指して研究を行なった。オキソバナジウム錯体は古くから有機合成や反応開発に利用されており、有機化学・生体化学において重要な化学種である。オキソバナジウム錯体は配位子の酸素原子で架橋した二核~多核錯体を形成しやすく、ポリオキソ化体であるPOM錯体は例が多い。それに比べ四面体構造のオキソ金属錯体の合成例は少なく、アキラルな配位子から成る金属中心にキラリティーを有するオキソバナジウム錯体に至っては例がない。 若手研究一年目では、金属中心にのみキラリティーを有する単核のバナジウム錯体を合成をメインに行い、目的のバナジウム錯体の合成に成功した。 若手研究二年目は、キラル補助剤による、オキソバナジウム錯体の動的不斉誘導に焦点を当てて研究を行なった。1)キラル補助剤によるオキソバナジウム錯体の動的不斉誘導の検討合成単離した、アキラルなビスフェノール型の二座配位子を有する四面体構造のオキソバナジウム錯体に対し、キラル補助剤を作用することでキラル制御を試み た。キラル補助剤のキラルメモリーをオキソ金属錯体にインプリンティングすることで、金属中心キラル錯体を選択的に合成を試みた。様々なキラル補助剤を検 討する中で、オキソバナジウム錯体によるキラルアルコールの転位反応を制御する事で、効率よくキラル誘導することが可能であることがわかった。2)溶液中による動的不斉誘導は30-50%deに留まったが、再結晶による光学分割により1種類のジアステレオマー体が単離できることが確認できた。今後、アキラルな配位子によるエナンチオマー体への誘導を検討し、金属中心にのみキラリティーを有する四面体型錯体へ展開する。また、ラセミ体ではあるが四面体型鉄錯体の合成にも成功したので、光学分割することで目的のキラル錯体へ誘導する予定である。
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