研究実績の概要 |
二酸化炭素の固定化による資源としての活用は、環境・エネルギー面から非常に重要なテーマである。現在の人工光合成と呼ばれる二酸化炭素固定化技術は課題が多く、分子ナノレベルの新しい触媒設計が求められている。本研究は、ディスクリートな樹上高分子であるフェニルアゾメチンデンドリマー (TPM-DPAG4) がイミンサイトにより金属イオンを階層的に集積する性質に着目した。金属イオンと共にリガンドを集積することができれば、デンドリマーを二酸化炭素還元に活性を持つ金属錯体の集積テンプレートとして活用することができると考え、本研究は金属錯体の位置選択的集積法の確立を目的とした。 前周期4d/5d金属とデンドリマーの相互作用の有無を確認すべく、ZrCl4, NbCl5, MoCl5, HfCl4, TaCl5, WCl6とTPM-DPAG4のUV-visタイトレーション実験を行った。結果、いずれの金属とも相互作用を示すことが分かったが、本来集積されるべき当量である60よりも過少当量で飽和してしまった。飽和点と各金属の平衡定数の間には相関 (r = 0.98) があることが分かり、金属のルイス酸性度が強すぎるため多座配位により当量集積できないと考えられる。そこで、ピリジン及び3-クロロピリジン共存下で再実験したところ、60当量で飽和し、且つ4つの独立した等吸収点を与えることが分かった。二種類のピリジンがリガンドとして働くことで多座配位が抑制され、当量的階層集積が可能となったと考えられる。そこでこの手法を用い、デンドリマーにルイス酸性の異なるTa(V), Nb(V), Mo(V), Zr(IV)をピリジンリガンド添加条件で階層的に集積することに成功した。以上のように、単独での当量集積が困難な前周期4d/5d金属を、リガンドを導入することでデンドリマーに当量的に階層集積することに初めて成功した。
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