研究実績の概要 |
[Ru(N^N^N)2]2+型錯体を光増感錯体として用い、従来の[Ru(N^N)3]2+型錯体では実現できない次世代の光増感機能を発揮することを 目的として研究を行った。
■S-T吸収を示すRu(II)光増感錯体の開発:弱いS-T吸収を示した錯体の基本骨格を基に、三座配位子の電子的特性を系統的に変調させ、それによってRu(II)錯体 のS-T吸収の波長領域およびモル吸光係数がどのように変化するかを詳細に検討した。bis(N-methylbenzimidazolyl)pyridineなどのsigma供与性の強い三座配位子と電子求引性の置換基を導入した2,2′:6′,2′′-terpyridineを用いることで、S-T吸収がより長波長側により顕著に発現することが分かった。またエネルギーギャップ則とは逆に、発光スペクトルが長波長シフトしたとき励起寿命が長くなった。これにより吸収の長波長化と励起状態の長寿命化という光増感剤として重要な性質の改善を両立することに成功した。
■立体配置の明らかな多機能複合系の構築:三座配位子を二つ有するRu(II)錯体光増感部をCO2還元触媒と連結した超分子錯体光触媒を合成し、半導体光触媒との複合体を構築した。この複合系はCO2を還元しギ酸を選択的に生成する光触媒として駆動した。従来の分子設計の超分子光触媒と比較すると、酸性水溶液中では光触媒能が劣っていたが、中性~塩基性水溶液中では逆転し、より優れた光触媒能を示した。また発光寿命測定および計算科学の結果から、励起状態の光増感錯体から半導体への目的とは逆方向の電子移動が抑制できていることが分かった。
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