研究課題
運動機能性を有する分子は、分子機械と呼ばれている。分子機械を複数組み合わせて、生体中でみられるような複雑な運動機能性を実現することが、次世代の分子機械研究において求められている。本研究では、2次元配位高分子の合成手法を利用し、分子ローターを強固に組み合わせることで、分子ローター間でのギアモーションを利用した2次元物質におけるキラル反転相転移現象の発現を目指した。金属への配位能力を有するユニットとして、テトラカルボキシポルフィリン(TCPP)、回転軸として作用する3価の希土類イオン、回転部位として振る舞うフタロシアニン(Pc)を組み合わせることで、ダブルデッカー型錯体Ln(Pc)(TCPP)を合成した。次に、銅イオンの存在下、LB法を用いることで、分子ローター2次元集積体を合成した。2次元膜に対してAFM測定を行ったところ、膜状の構造がみられたことから、分子ローターの集積に成功していると考えられる。紫外可視吸収スペクトル測定では、集積前後においてスペクトルに明確な変化が見られなかったことから、銅イオンの存在下でもLn(Pc)(TCPP)の構造が保たれていることが示唆された。一方で、温度可変の薄膜吸収スペクトルでは、温度上昇に従って分子膜の熱膨張による微小な吸収強度の減少のみが観測され、本研究で目指している2次元物質の相転移現象を観測するには至らなかった。本課題では、分子ローター2次元集積体の合成に成功したが、期待された物性の発現にはさらなる分子設計が必要である。
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Chemistry; A European Journal
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10.1002/chem.201905796
Inorganic Chemistry
10.1021/acs.inorgchem.9b03735