研究課題/領域番号 |
18K14245
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大谷 亮 九州大学, 理学研究院, 准教授 (30733729)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 配位高分子 / 熱膨張 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
金属イオンを有機配位子で架橋した無限骨格を持つ配位高分子は、柔軟な配位結合ネットワークに基づいた構造ダイナミクスを示し、ガスや熱、圧力などの外部刺激に対して特異な構造変化すなわち応答性を示す物質群である。本研究では、異方的な構造有する二次元シート型配位高分子[Mn(salen)]2[MnN(CN)4](1)に着目し、ナノ粒子化することでドメインサイズと配位結合強度が特に熱・圧力といった物理刺激応答性に与える影響について明らかにすることを目的としている。 水溶液攪拌法により1の30um程度の粉末、水溶媒の代わりにクロロホルムを用いることで200 nm程度のナノ粒子試料の作成に成功した。化学的組成や配位結合ネットワーク構造は、IRスペクトル、元素分析、粉末X線回折測定から同一であることが分かった。そこで、佐賀県の九州シンクロトロン光研究センターにおいて粉末およびナノ粒子の温度可変粉末X線回折測定を行った。120 Kから400 Kまで20 Kおきに回折測定を行い、低角側の5本の回折ピークを用いて、各温度での格子定数を決定した。両化合物とも面内は収縮し面間は膨張するという異方的な熱膨張挙動を示した。一方で、熱膨張率に着目すると、バルク粉末は過去に報告した単結晶X線構造解析による熱膨張率と類似した値を示したが、ナノ粒子は、より小さい値を示した。現在までにそのメカニズムは明らかとなっていないが、粒子サイズによるドメインサイズの影響あるいは欠陥の量の違いを反映していると考えており、検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次元配位高分子について同組成のバルク粉末とナノ粒子の合成に成功し、それぞれの熱膨張挙動を明らかにし、熱膨張率が異なることを見出だした。今後メカニズムを明らかにすることで、熱膨張と粒子サイズの新しい関係性が見出されると期待できる。以上より、おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、それぞれの試料の欠陥の有無について検討する。具体的には、試料を溶解させNMRやICPから、元素分析では見出せない精度での組成決定を行う。また、錯体ユニットを変更することで類縁体を合成し、同様に熱膨張挙動について検討することで、配位結合強度が熱膨張率に及ぼす影響について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月から異動したため、予算を使用できない期間が生じた。その間の分は、校費と別の科研費により賄ったため、本助成金には余りが生じた。2019年度には研究成果報告のために2度の海外での国際学会があり、また有機合成のためのカラムを購入する予定であるため、余剰分含めて適切に使用する予定である。
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