研究実績の概要 |
金属イオンを有機配位子で架橋した無限骨格を持つ配位高分子は、柔軟な配位結合ネットワークに基づいた構造ダイナミクスを示し、ガスや熱、圧力などの外部刺激に対して特異な構造変化すなわち応答性を示す物質群である。本研究では、異方的な構造有する二次元シート型配位高分子[Mn(salen)]2[MnN(CN)4](1)に着目し、ナノ粒子化することでドメインサイズと配位結合強度が特に熱・圧力といった物理刺激応答性に与える影響について明らかにすることを目的としている。 その中で、1の類縁体として[Mn(salen)]2[ReN(CN)4](2)の合成に成功し、単結晶構造解析を行った。2はReとMnの原子半径の違いを反映し、二次元シートのジグザグピッチが大きくなった。それに伴って2つの結晶水を取り込むことで、シートのひずみが観測された。これは、1つの結晶水を含む1とは異なる構造特性である。更に、温度変化測定から熱膨張挙動を検討した。昇温による水の脱離に伴って、シートのひずみが解消し1と同型の構造へと変化した。また、1よりも大きな異方的熱膨張挙動を示した。これはジグザグピッチの大きさの違いを反映している。 更に、1と同様の方法で、2の粉末、ナノ粒子の作成を行い、温度変化粉末X線回折測定を行った。その結果、1と同様にナノ粒子の方が小さな熱膨張係数を持つことが分かった。C,H,N元素分析の結果からは粉末とナノ粒子における組成の違いは観測されなかったが、2に対して蛍光X線分析測定を行うと、ややMn:Re比率の違いがみられた。これは、元素分析の精度では明らかにできない組成の違い、すなわち欠陥の量の違いを示唆している可能性がある。現在、厳密な組成の決定と、特に水吸着測定からゲスト取り込みの違いについても検討している。
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