研究課題/領域番号 |
18K14255
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
土戸 優志 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 協力研究員 (40737219)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子認識 / 細菌 / ボロン酸 / デンドリマー / Molecular Recognition / Bacteria / Phenylboronic Acid / Dendrimer |
研究実績の概要 |
本研究の目的として掲げた、ボロン酸型プローブ/高分子複合体による細菌種の簡易・迅速な判別手法の開発を目指し、研究を推進した。本年度はまず、ボロン酸をデンドリマー表面に修飾したボロン酸修飾デンドリマーを用いて、どのような条件で、どのような細菌を判別できるかの探索に重点を置いて研究を推進した。具体的な検討項目とその成果を以下に述べる。 1)ボロン酸修飾デンドリマーと複数の細菌種との相互作用評価、2)グラム陽性菌・グラム陰性菌の膜表面とボロン酸との結合部位の探索、3)ボロン酸集積の足場材料の形状検討を行った。 まず初めに種々の細菌種について、ボロン酸修飾デンドリマーと細菌の相互作用について調べたところ、グラム陽性菌に対して迅速な凝集形成挙動を示すことがわかった。次に、ボロン酸の糖類との結合形成能がpHに影響を受ける点を利用して、pHを変えるとボロン酸修飾デンドリマーと細菌表面の糖誘導体とがどのような挙動を示すかについて検討した。その結果、中性pH付近でのみ、グラム陽性菌とグラム陰性菌とで凝集形成の大きな差がみられることが明らかになった。 次に、ボロン酸と膜表面の結合について、ペプチドグリカン共存下での細菌凝集実験を行ったが、競合による細菌の凝集阻害は起きなかった。このことから、ボロン酸はペプチドグリカンとは異なる場所と結合形成している可能性が示唆された。さらに、細菌凝集を行うのに、デンドリマー(球状高分子)とポリエチレンイミン(直鎖状高分子)のどちらがよいか検討を行った結果、デンドリマーの球状で比較的剛直な構造が、細菌間の結合形成を促進し、迅速な凝集形成挙動を示していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年6月に所属機関を異動したため、申請時点とは研究環境が大きく異なることとなった。所属機関の異動に伴う種々の事務手続きや研究の立ち上げに時間を要してしまった。そのため、当初の研究計画を精査して、研究目的の達成にあたって最も重要な細菌の細胞膜構造の違いを利用した細菌の簡易識別の達成を最重要項目とし、研究を推進した。当初の1年目の研究計画に記載していた、細菌の凝集メカニズムの特定にまでは至らなかったものの、2年目に計画していたポリマー骨格を球状のデンドリマーから直鎖状のポリマーに変更した場合の細菌識別能の評価については、次年度の円滑な研究推進に重要な要素となるため、先行して本年に実験を進めた。これらより、本研究課題の進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ボロン酸のデンドリマーへの修飾比率や、デンドリマーのコアサイズと細菌凝集挙動の影響について評価を進め、細菌種の簡易・迅速判別のための条件の最適化を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究機関の異動に伴って購入機器の見直しを行ったため。また、本研究課題を含む研究成果について学会より受賞し、学会参加費等一部の費用が免除されたため、未使用額が生じた。未使用額については、翌年度以降の研究をより活発に推進するための試薬・消耗品の購入、学会発表による研究成果の積極的な公開などの費用に充当する予定である。
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