ボロン酸修飾デンドリマーを用いた細菌の簡易・迅速な判別法の開発を進めている。本年度は、ボロン酸修飾デンドリマーを用いて、細菌を高感度に検出する技術開発を進めた。また、今後の社会実装に向けて、広いpH領域で細菌を選択的に検出する方法の開発を進めた。 (1)蛍光団を有するボロン酸修飾デンドリマーの開発:ボロン酸修飾ポリアミドアミンデンドリマーのアミノ末端にダンシル基を少数導入した、蛍光標識ボロン酸修飾デンドリマーを合成した。この合成分子を検体溶液に添加・混合したのちに蛍光スペクトル測定したところ、混合後において蛍光強度の減少が見られた。これは、蛍光標識ボロン酸修飾デンドリマーが細菌を認識して凝集したためであり、約10^4 CFU/mLで細菌を検出し得ることを明らかにした。また、細菌認識の駆動力は、蛍光標識ボロン酸修飾デンドリマーのフェニルボロン酸と細菌の表面糖鎖との結合であることを明らかにした。また、この蛍光標識ボロン酸修飾デンドリマーは、グラム陰性菌に対して抗菌活性を示した。 (2)ジトピック型ボロン酸修飾デンドリマーの開発:ジピコリルアミンは2価の銅イオンを配位させると、リン酸イオンや細菌表面のリン酸基と結合する。そこで、ジピコリルアミンをボロン酸修飾デンドリマーのアミノ末端に修飾した、ジトピック型のジピコリルアミン・ボロン酸修飾デンドリマーを作製した。この分子を用いて細菌検出を行ったところ、pH4~10程度の広いpH領域においてグラム陽性細菌に選択的な凝集能を示し、その検出感度は、ボロン酸のみを修飾したデンドリマーを用いたときよりも高いことがわかった。
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