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2018 年度 実施状況報告書

非分散型赤外線吸収法による乳酸量の高速イメージング測定とガン診断技法への展開

研究課題

研究課題/領域番号 18K14256
研究機関東京理科大学

研究代表者

宇部 卓司  東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 助教 (80756388)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード赤外線 / 水中 / ガン細胞 / 乳酸
研究実績の概要

本研究では、特定波長の赤外線吸収を利用して細胞が代謝する乳酸量を定量測定し、がんに代表される代謝異常を非侵襲的に検出することを目的としている。本年度は研究の骨子となる、乳酸の吸収によるガン細胞の識別を顕微鏡を備えた赤外分光光度計において実証し、ガン細胞だけでなく、正常細胞であっても酸欠状態になることで嫌気性解糖が進行し、乳酸が生成することも見いだした。この結果は2018年のVibrational Spectroscopy誌に掲載され、単一波長の吸収を利用した非分散赤外線イメージング測定への第一歩となった。
続いて、主に近年サーモグラフィー用途で用いられる非冷却ボロメーターを利用して非分散赤外線イメージングを行うべく、各画素14bit の分解能を有する640x480ピクセルの2次元検出器とゲルマニウム製顕微レンズを備えた赤外線カメラを導入し、さらに特注ソフトウェアによって、各画素が有する14bitデータを直接読み出すことに加え、温度を均一に制御した黒体板の複数の温度における赤外線画像を取得し、素子間の感度とオフセットのばらつきを補正するアルゴリズムを開発した。その結果、これまでイメージング測定に用いられてきた液体窒素冷却型MCT検出器と比較して安価な非冷却赤外線ボロメータによって、14bitのビット深度中12bit程度の縦軸分解能を発揮させることで、イメージング測定に利用できることを示した。また、ウェルプレート上で培養した細胞の測定を行う為に、ウェルボトムを赤外線を透過するシリコン若しくはフッ化カルシウムとなった特殊ウェルプレートを作製し、細胞培養に対しても影響なく測定ができることを実証した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

乳酸の特定波長の吸収を用いたガン細胞の識別を行う為、事前に赤外分光顕微鏡を用いた赤外線吸収スペクトル測定において、1050 cm-1即ち9.5 μmの吸収帯が、生体に含まれる分子による吸収と重畳しない乳酸固有の吸収帯であり、ガン細胞がWarburg効果によって嫌気性解糖を優先的に行っている証左であることを示し、また正常な細胞であっても、高い細胞密度の状態下では培地中の酸素濃度の低下によって嫌気性解糖が進行し、ガン細胞同様に乳酸を生成することを示した。このこの結果は2018年のVibrational Spectroscopy誌に掲載され、本研究では9.5μmの波長のみを透過するバンドパスフィルターを導入することが決定した。
また、本研究予算によって導入した非冷却赤外線ボロメーターを搭載したサーモカメラを特注ソフトウェアによって制御することで、検出素子が出力する輝度データを直接読み取ることを図った。これは既知の複数温度の黒体板を撮像した画像を用いて、640x480画素全てにおける感度のベースラインとゲインを補正することで、全画素において14bitのADコンバータの出力の内12bit相当のリニアリティを実現できることを実証し、これまで赤外イメージング測定に用いられてきた高価な2次元MCT検出器に比べて安価なSiボロメーターにおいてもイメージング測定に十分利用できることを示した。
実際に細胞のイメージング測定を行う為に、底板に赤外線を透過するSiまたはフッ化カルシウムの薄板を用いたウェルプレートを作製し、実際に細胞培養試験を行った。その結果窓板及び接着剤による細胞培養への影響は確認されず、通常のウェルプレート同様の取り扱い方法で細胞培養を行うことができることを実証した。

今後の研究の推進方策

ガン細胞によって産出される培地中の乳酸濃度はこれまでの研究で10 mM程度であることが予想されているが、微量の乳酸を定量性良く検出するために、光源の調整と乳酸の検量線を作製する必要性が示されており、現在研究遂行中である。特に照射光源は輝度と分布を両立した照射光学系を組むことで黒体板同様の輝度分布を実現し、画面上のイメージ画像でガン細胞を識別できるよう調整に取り組んでいる。この課題が解決され次第、様々な細胞をイメージング測定することで、乳酸生成量の差違からガン細胞を識別する技術の応用展開を図る計画である。

次年度使用額が生じた理由

研究計の進捗状況を鑑み、当初の予定より細胞培養の回数を減らしたことから、培養に関わり、使用期限が短い試薬等の購入量を減少させたため、次年度使用額が生じた。次年度はこの分を合わせて試薬等の購入を行い研究を遂行していく予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Transmission infrared micro-spectroscopic study of lactic acid production in cultured cells2018

    • 著者名/発表者名
      Ube Takuji、Yamamoto Kanako、Ishiguro Takashi
    • 雑誌名

      Vibrational Spectroscopy

      巻: 98 ページ: 8~14

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.vibspec.2018.06.012

    • 査読あり
  • [学会発表] 入射光・試料透過光の同時計測・透過赤外分光顕微鏡システムの開発2019

    • 著者名/発表者名
      黒川雄太、石黒孝、宇部卓司、谷口潤、鐘愷楽
    • 学会等名
      2019年日本金属学会春期大会
  • [学会発表] 黒川雄太、諏訪雄士、宇部卓司、石黒孝2018

    • 著者名/発表者名
      マイクロ流路を組込んだ透過赤外分光顕微鏡
    • 学会等名
      東京理科大学研究推進機構総合研究院 アグリ・バイオ公開シンポジウム

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公開日: 2019-12-27  

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