研究課題/領域番号 |
18K14259
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
深海 雄介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, ポストドクトラル研究員 (10754418)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鉛同位体 / TIMS / トータルエバポレーション法 / ダブルスパイク法 |
研究実績の概要 |
10の13乗Ω抵抗付増幅器をトータルエバポレーション法、ダブルスパイク法を併用したTIMS分析法(TE-DS-TIMS)に適用し、1pg程度の極微量の鉛について複数のファラデーカップを用いた多重検出による高精度同位体分析手法の確立を目指す。本年度は同位体比が既知である同位体スタンダード(NIST981標準物質)の測定を行い、10の13乗Ω抵抗付増幅器を使用した場合のTE-DS-TIMS法の同位体比測定精度・確度を検証するための実験を進めた。まず、今後の分析に使用する濃縮同位体スパイクについて、ダブルスパイク法による同位体比キャリブレーションを行った。キャリブレーションの正確さを確かめるために10の13乗Ω抵抗付増幅器を導入する装置を使用して同位体比既知のスタンダードの測定を行った結果、先行研究と同位体比測定結果が測定誤差の範囲内で一致したため、ダブルスパイクの同位体組成についてキャリブレーションの正確さが確認できた。 10の13乗Ω抵抗付増幅器は年度後半に納品され、装置への取り付け・調整を行った後、スタンダードの測定を行いTE-DS-TIMS法に適用した場合の特性について調べた。2ngのPb量を用いたスタンダード測定において、検出器に使用する増幅器がすべて10の11乗Ω抵抗の場合と、最も存在度の低い204Pbのみに10の13乗Ω抵抗を適用した場合を比較した結果では、測定精度について顕著な違いは見られなかった。一方で、より少量の100pgの測定においては、10の13乗、12乗Ω抵抗を併用して適用した場合、207Pb/206Pb比の測定精度について、すべて10の11乗Ω抵抗を使用した場合と比較して約10分の1程度に改善されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10の13乗Ω抵抗付増幅器が年度後半に取り付けであったため、10の13乗Ω抵抗を適用した実験時間は当初の計画よりも少なくなった。一方で、最も懸念のあった、抵抗値の異なる増幅器間において信号強度の変化に対する時間応答性が異なることに起因する同位体比のずれについて、TE-DS-TIMS法においては予想よりも小さく、時定数τを用いた補正の有無で測定値に誤差の範囲を超えた差は見られなかったため、補正法の検討時間が計画当初よりも短縮できた。測定装置については大きなトラブルもなく順調に稼働しており、実験全体の進捗状況は概ね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り引き続き同位体スタンダードの測定を行い、基礎データを取得する。測定に最適なフィラメント電流や測定値計算に使用する信号強度の閾値については前年度の実験により条件が明らかになっており、次年度は測定に使用するPb量を100pg以下に減少させていき、使用量・測定精度の限界を明らかにする実験を進める。ここまで行ってきた同位体スタンダードを用いた精度・確度の検証についてまとめ、論文として投稿する。 上記の実験と並行して測定の前処理として行う化学分離操作時に混入する汚染鉛について、複数回の空実験を行い、混入しうる同位体比の変動幅を把握することで、測定値から汚染鉛の影響を除くための補正を検討する。また、使用する酸や容器の見直しを行い、絶対的な汚染鉛量を低減を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初に購入予定であった実験器具について、共用の物品で代用することが可能になったためその差額が次年度使用額として生じた。 計画よりも測定や実験回数が増加した場合に備え、測定に必要な消耗品の購入に充てる予定である。
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