10の13乗Ω抵抗付増幅器をトータルエバポレーション法、ダブルスパイク法を併用したTIMS分析法(TE-DS-TIMS)に適用し、1 pg程度の極微量の鉛について、複数のファラデ-カップを用いた多重検出による高精度同位体分析法の確立を目指す。同位体比が既知である同位体スタンダード(NIST981標準物質)を用いて、測定に用いるPb量を減らしていき、測定精度・確度を検証した。測定に使用する検出器の増幅器がすべて10の11乗Ω抵抗の場合と、最も存在度の低い204Pbのみに10の13乗Ω抵抗を適用した場合を比較すると、2ng程度の測定では精度の顕著な改善は見られなかった。一方で、100pg以下の測定においては10の13乗Ω抵抗を使用した場合に約10分の1程度に精度が改善された。抵抗値の異なる増幅器間における信号強度の変化に対する時間応答性の差異に起因する同位体比のずれについては、2ng程度のPb量の測定では時定数補正の有無で顕著な違いは見られず、10pg以下の極微量測定の場合においては時定数補正を行うことにより繰り返し再現性が改善されることがわかった。また、10pg以下の測定では、Pb量が多い測定時には問題とならなかった204Hgによる同重体干渉の影響が見られるようになるため、補正を行うことで再現性が向上することがわかった。10pg程度以下のような信号強度の小さい場合の測定について、10の13乗Ω抵抗を使用した場合に必要なデータ解析方法を検証し、極微量のPb量を用いたTE-DS-TIMSによる同位体分析手法を確立した。
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