研究課題/領域番号 |
18K14265
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
外村 彩夏 熊本県立大学, 環境共生学部, 助教 (50762704)
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研究期間 (年度) |
2019-02-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生分解性プラスチック / ナイロン4 / ポリアミド4 / 分解酵素 |
研究実績の概要 |
ナイロン類は一般的に難分解性といわれているが、例外的にナイロン4は生分解性を示すことがわかっている。また、原料もバイオマスから合成可能なGABAであり、環境調和型プラスチックとして期待されている。しかしながら、ナイロン4実用化のためには、その生分解機構が明らかになっていないために、使用時や廃棄時における分解コントロールの問題が残っている。本研究では、ナイロン4分解菌を単離し、その単離した細菌よりナイロン4分解酵素を同定すること目指す。 今年度は、ナイロン4分解酵素の遺伝子クローニングと単離したナイロン4分解菌の分解性評価を検討した。まずは、土壌より単離したナイロン4分解菌について、16S rRNA解析を行い、菌株の相同性検索を行った。次に、これらの菌株を用いて、分解酵素遺伝子のクローニングを試みた。プロテナーゼKの配列を参考に、プライマーを設計し、単離したナイロン4分解菌のゲノムDNAを鋳型として、degenerate PCRを行った。その結果、一部の酵素遺伝子を増幅させることができた。現在、この遺伝子の同定を進めている。次に、単離したナイロン4分解菌の分解性評価について、ナイロン4フィルムを入れた試験管液体培地に、ナイロン4分解菌を接種し、培養液上清およびフィルム残渣を経時的に回収することで評価を行った。ナイロン4フィルムの重量については減少がみられたが、減少は分解試験1週間後までしかみられなかった。また、培養液上清をLC/MSにて分析した結果、すべての菌株においてコントロールではみられないナイロン4の末端と思われる分解産物のピークが2つ検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナイロン4分解菌のゲノムDNAを用いて、degenerate PCRを行い、酵素遺伝子と思われる一部の遺伝子を増幅させることができ、分解試験についてもフィルムの分解による重量減少、分解生成物について明らかにすることができた。以上のように、研究計画をある程度、遂行できていると考え、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の分解試験では、フィルムの重量減少が1週間後までしかみられなかったため、今後、培地成分の添加等を行い、フィルムの重量減少、分解生成物について再検討するとともに、分解試験後の表面観察を行う予定である。 また、分解酵素遺伝子のクローニングに関しては、当初の予定通り、増幅した遺伝子の一部の配列から、酵素遺伝子の全塩基配列の決定を目指す。このクローニングが順調に進まなかった場合には、プロテナーゼK以外の酵素の配列も参考にし、さらにdegenerate PCRを行うことで、全塩基配列の決定を目指す。酵素が同定できた場合には、異種発現により、酵素合成を行い、酵素の性質についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究発表用の旅費を計上していたが、予定していた学会が新型コロナウイルスの影響で中止になったため旅費を使用しなかったことがあげられる。また、分解性評価を進展させたため、遺伝子クローニング用に購入する試薬が予定よりも少なかった。 繰り越した研究費については、次年度の研究発表のための旅費と物品費にあて、遺伝子クローニングを効率よくすすめるために使用する。
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