ナイロン類は、高機能なエンジニアリングプラスチックとして広く用いられているが、その大部分は石油由来の非生分解性である。一方、ナイロン4は、原料がバイオマスから合成可能なγ-アミノ酪酸(GABA)であり、生分解性も有するため、環境調和型プラスチックとして期待される。そこで、本研究では、自然環境中からナイロン4分解菌を単離し、ナイロン4分解酵素の同定と分解性評価を試みた。土壌中より60株以上のナイロン4分解菌を単離し、16S rRNA解析を行った。これらの菌株の中から、ナイロン4含有培地でより生育がよく、明瞭なクリアゾーンを形成した菌株を選抜し、分解試験と分解酵素同定の実験に用いた。分解に関与する酵素を単離するために、degenerate PCRによる酵素遺伝子の増幅を試みたところ、一部の遺伝子の増幅ができたものの、全遺伝子のクローニングには至らなかった。しかしながら、単離した分解菌の中で、高い分解活性がみられた1菌株について、形態・生化学的性質について明らかにし、Pseudomonasxanshomonas sp. TN-N1と命名した。TN-N1株については、岩手大学の研究協力により分解酵素を精製することができた。他の菌株の分解酵素については、今後も継続して研究を進めていく予定ある。 ナイロン4フィルムを用いた分解試験後の培養液上清について、2019年度に実施したLC/MS分析では、帰属できない物質があったため、分解試験の条件を再検討し、培養液上清のLC/MS分析を再度実施した。その結果、GABAモノマーおよびオリゴマーが検出された。さらに、物性の改善も考慮し、ε-カプロラクトンとの共重合体を作製し、ナイロン4分解菌のうち3株を使用した分解性評価も行った。 その結果、これらの菌株は共重合体フィルムも分解することができ、ナイロン4フィルムよりも高い分解率を示した。
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