研究課題/領域番号 |
18K14268
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
磯野 拓也 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70740075)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ブロック共重合体 / ミクロ相分離 / 自己組織化 / 単分散ポリマー / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
本課題では、5 nm以下の周期間隔でミクロ相分離構造を形成・制御可能なブロック共重合体の創出を目標としている。これを実現するために、分子量分散の無い糖鎖含有ブロック共重合体に着目し、その合成とミクロ相分離挙動の評価を行った。 本年度は、疎水性セグメントとして天然由来の長鎖炭化水素であるソラネソール(9ユニットのイソプレンから構成される)、糖鎖としてマルトオリゴ糖(グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース)を用い、直鎖状ジブロック共重合体を合成した。還元末端にプロパルギル基を導入したオリゴ糖をアジド化したソラネソールに対してクリック反応させることで目的とするジブロック共重合体を合成した。ソラネソールとオリゴ糖は何れも分子量分散のない化合物であり、必然的に生成するブロック共重合体は単分散である。 続いて、糖鎖重合度を1~5に変化させた一連の直鎖状ブロック共重合体について小角X線散乱測定を行うことでミクロ相分離構造を評価した。その結果、わずか分子量1000~2000ほどであるにもかかわらず、いずれのサンプルにおいてもミクロ相分離(大部分はラメラ構造)することを見出した。さらに、ミクロ相分離構造の周期間隔は5.5~7.5 nmであり、シングルナノスケールのナノ構造を得ることに成功した。ラメラ構造の周期間隔は糖鎖重合度が1増えるごとに約0.4 nm増加することがわかり、糖鎖重合度の調節による相分離サイズの制御に成功したと言える。 直鎖状ジブロック共重合体に加え、分岐構造を導入したブロック共重合体の合成も行った。小角X線散乱測定の結果、直鎖状ジブロック共重合体では見られなかったスフィア、シリンダーおよびジャイロイド構造の形成が示唆された。 以上より、糖鎖含有単分散ブロック共重合体はシングルナノスケールのミクロ相分離構築に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単分散糖鎖ブロック共重合体の系統的な合成とナノ構造解析に成功し、望みのサイズとモルフォロジーを有するミクロ相分離構造を得るための分子設計指針を確立した。すでに最終目標とする5 nmに迫る周期間隔でミクロ相分離する材料をいくつか見出している。さらに、一般的なブロック共重合体ではほとんど見られないジャイロイド構造の発現に成功するなど予想を超える結果が得られている。これらのことから、当初の計画以上に研究が進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ソラネソール以外の疎水性セグメントを有する単分散糖鎖ブロック共重合体についても検討を進め、最終目標とする5 nm以下の周期でのミクロ相分離構造発現を目指す。 平成30年度の検討では、バルク中におけるミクロ相分離観察がメインであったが、今後は、リソグラフィー用レジストとしての応用を志向し、薄膜中でのミクロ相分離挙動を重点的に検討する。また、ミクロ相分離構造を薄膜中で垂直配向させるアニーリング条件を検討し、実際に次世代リソグラフィー用のレジストとしての応用を目指す。
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