本課題では、5 nm以下の周期間隔でミクロ相分離構造を形成・制御可能なブロック共重合体(BCP)の創出を目標としている。これを実現するために、分子量分散の無い糖鎖含有BCPに着目し、その合成とミクロ相分離挙動の評価を行った。 昨年度までは疎水性セグメントとして9ユニットのイソプレンから構成されたソラネソールを用いた単分散糖鎖BCPを検討した。本年度は、疎水性セグメントとして天然由来の長鎖炭化水素であるファルネソールおよびトコフェロール(3および4ユニットのイソプレンから構成)、糖鎖としてマルトオリゴ糖(グルコース、マルトース、マルトトリオース)を用い、分子量分布の無い直鎖状BCPを合成した。合成は、アジド基を導入したファルネソールおよびトコフェロールに対してプロパルギル基で還元末端を修飾したマルトオリゴ糖をクリック反応させることで達成した。続いて、小角X線散乱(SAXS)測定により各BCPのナノ構造を評価した。新規に合成したBCPは1000以下の低分子量であるにもかかわらず、SAXS測定の結果から、4~6 nm周期のラメラ構造またはジャイロイド構造を形成することが明らかとなった。特に、ファルネソールとグルコースからなるBCPが周期間隔4.2 nmという世界最小レベルのミクロ相分離構造を形成したことは特筆すべき結果である。 本年度はさらに、これまで合成した単分散糖鎖ブロック共重合体について薄膜中でのミクロ相分離構造を検討した。その結果、大部分の直鎖状BCPは基板に対して平行に配列したラメラ構造を形成するが、分岐構造を導入したソラネソール由来BCPは基板に平行に配列したシリンダー構造を形成することが判明した。 以上より、分子量分布の無い天然由来長鎖炭化水素とオリゴ糖鎖を組み合わせることで極めて微細なミクロ相分離構造をバルク中と薄膜中の両方で発現・制御することに成功した。
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