研究実績の概要 |
本研究課題では、「動的共有結合」が生み出す特異な「構造再編成」を利用することで、従来合成が困難であった環状高分子の効率的な合成を目指す。初年度(平成30年度)は、熱によってその動的特性を制御可能な(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)ジスルフィド(BiTEMPS)の水酸基誘導体(BiTEMPS-OH)をジイソシアネート基と反応させることで、BiTEMPS骨格を繰り返し単位に有する直鎖状の高分子(P-1)を合成した。合成したP-1を希釈条件下で加熱することで結合交換反応を引き起こし、エントロピー的に有利な環状体 (P-2) へと選択的に誘導することに成功した。BiTEMPS-OHと反応させるジイソシアネートの構造を高分子とした場合にも、同様の反応が進行し、環状高分子を合成できることもわかった。本反応系を適用できる分子骨格の拡張を目指して、BiTEMPS-OHの水酸基とアクリル酸2-イソシアナトエチルを反応させることでチオ-エン反応活性なアクリレート基を有するBiTEMPS誘導体(BiTEMPS-Ac)を合成した。BiTEMPS-Acと末端にチオール基を有しているポリエチレングリコール(PEO)を用いて同様の手順で環化を行ったところ、環状のPEOを合成することにも成功した。本手法は環状高分子の合成法のみならず、超分子的な包摂能や反応場を提供する低分子環状化合物の合成法へも展開できることから今後の展開が期待できる。
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