研究課題/領域番号 |
18K14273
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
天本 義史 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (70773159)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エラストマー / 分子動力学シミュレーション |
研究実績の概要 |
本年度は、ハロゲン結合性エラストマーの力学物性について、エラストマーの合成と動的粘弾性測定、及び、分子シミュレーションを用いた検討を行った。 エラストマーの合成に関して、ハロゲン結合性モノマーを、メタクリル酸クロリドとハロゲン結合性ユニットを持つアルコールとの縮合反応により合成した。その際に、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素という4種類のモノマーをそれぞれ調製した。同様に、ピリジン含有のアルコールを用いることで、ピリジンモノマーを調製した。その後、ブチルアクリレートと二官能性ビニルモノマー、ハロゲン結合性モノマー、ピリジンモノマーとのラジカル共重合を行い、ハロゲン結合性のエラストマーを得た。動的粘弾性測定において、ハロゲンの種類が臭素とヨウ素の場合、ゴム状平坦領域の貯蔵弾性率が上昇する事を見出した。しかし、臭素やヨウ素では、分子量が大きく、その影響が考えられるため、ピリジンモノマーの構造を変えて検討する必要がある。 シミュレーションに関しては、分子動力学法に基づき、Kremer-Grestの粗視化モデルを用いて、評価した。シミュレーターの中で、反応性ポリマーを用いて架橋高分子を調製した。ハロゲン結合の強度の違いを表現するため、エラストマーのLJポテンシャルのパラメーターを変え、カットオフを長くすることで相互作用を大きくし、一軸伸長を行った。LJポテンシャルの深さが大きくなるほど、応力が上昇する事を見出した。 以上、今年度は、ハロゲン結合性エラストマーに関して、ハロゲンの種類による力学物性の違いついて、基礎的な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ハロゲン結合を有するエラストマーの合成や分子シミュレーションを行い、想定通りに研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、合成した高分子の力学物性を評価し、シミュレーションに基づき応力に対する相互作用の強さと伸長速度依存性を解析する予定である。力学物性に関しては、引張試験の応力やタフネス、動的粘弾性測定を用いたゴム状平坦領域の貯蔵弾性率に基づき、評価する。一方、シミュレーションについては、ハロゲン結合に対応するユニットの配向性と力学物性の関係を明らかにする。また、比較として、ピリジン環の代わりにベンゼン環を導入する事で、ハロゲン結合の相互作用の寄与を評価する。 研究計画では、分光法を用いてハロゲン結合の配向性を評価する予定であったが、研究機関が変更となったため、次年度の計画では行わない予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究代表者が東京大学から九州大学に異動したため、予算執行計画に変更が生じた。次年度は、本年度分と併せて、力学物性の測定装置の購入を検討している。
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