本研究では、ハロゲン結合を有するエラストマーに関して、実験・シミュレーションに基づき、力学的な性質に対する分子鎖間相互作用の役割の解明を目的とした。本年度は、昨年度に引き続き、分子動力学シミュレーションによる分子鎖間相互作用とネットワークの繋がりに関して検討した。Kremer-Grestのバネ-ビーズモデルを用いて、粗視化分子動力学シミュレーションを行った。ビーズ間のLJのパラメータを変える事で、分子鎖間相互作用を変化させて、一軸伸長を行った。また、架橋濃度を変える事で、多様なネットワーク構造を有するエラストマーを調製した。一軸伸長下の応力に対しては、分子鎖間相互作用とネットワークの繋がりの両方が重要である事が明らかとなった。また、分子間相互作用は、あるしきい値からゴム弾性に影響する事がわかった。エラストマーのゴム弾性を扱う一般的なPhantom networkモデルでは、架橋密度と分岐数で応力と歪みの関係が説明される。今回は、架橋密度と応力がほぼ等しくなるようにエラストマーを調製しており、分子鎖間相互作用の強さとネットワークの繋がりが応力に対して寄与していると考えられる。 本研究で行ったように、ゴム弾性に対して、弱い相互作用とネットワークの繋がりも同様に一軸伸長下の応力に重要である事が示された。ハロゲン結合が一軸伸長下でどのように移り変わり応力に影響するか、ハロゲン結合の強さとネットワーク構造の関係については、まだ未解決であるため、今後検討したい。
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