研究実績の概要 |
平成30年度は、より精密なステレオブロックポリマー合成のため, 助触媒に対して従来系よりも鋭敏に応答するネオジム触媒系の開発を行った。その結果, アニオン性μ2-ボロヒドリドネオジム錯体とジアルキルマグネシウム, 修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を組み合わせた触媒系がNd(BH4)3(thf)3錯体を用いた系に比べてより高cis-1,4特異的(>90%)なイソプレン重合を進行させることを見出した。また, この錯体は, MMAOを加えない場合にもNd(BH4)3(thf)3錯体より高いtrans-1,4特異性(>95%)を示した。μ2-ボロヒドリド錯体はブタジエン重合においても高い立体特異性を示し, そのcis-1,4特異性はCp*Nd(BH4)2(thf)2錯体とほぼ同等であった。錯体のX線結晶構造解析やNMRによる反応追跡から, μ2-ボロヒドリド錯体を用いた重合における高立体特異性は, ボロヒドリドの配位数の減少によってμ3-ボロヒドリド錯体よりもNd-B結合が長くなったこと, またそれに伴ってボロヒドリドの反応性が高くなったことによって現れたことも明らかにした。ホウ素上にアルキル基を1つ有するμ3-ボロヒドリドネオジム錯体の単離にも成功したが, イソプレン重合における立体特異性はNd(BH4)3(thf)3錯体よりも低かった。 他には, ステレオブロックポリマーの末端官能基化についても検討した。ネオジム錯体を用いたイソプレンのステレオジブロック重合を行った後, 乾燥空気を用いて末端を酸化することで, cis-1,4末端に水酸基が導入されたステレオジブロックポリイソプレンの合成に成功した。
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