近年報告されている「ロタキサン架橋高分子」は、可動可能な架橋点を有するために他の架橋高分子とは異なる興味深い力学特性を発現する。しかしながらこのロタキサン構造の適用可能な高分子が少ないのは、汎用高分子へのロタキサン架橋部位の直接的な導入が非常に困難であることに他ならない。本研究課題では汎用高分子を高効率で修飾可能なクリック反応剤であるニトリルオキシドに着目し、これを用いたロタキサン架橋高分子の高効率合成を目指す。未だに既存の合成高分子に後架橋にて直接ロタキサン構造を導入することに成功した例はなく、この手法を確立できれば汎用高分子の後架橋をもって高付加価値の材料を提供可能になると期待される。 本年度はニトリルオキシド基含有ロタキサン架橋剤の無触媒クリック反応によりロタキサン架橋高分子フィルムを作成し、その力学特性を評価した。得られたロタキサン架橋高分子フィルムはロタキサン構造を持たない二官能ニトリルオキシドを用いて作成した共有結合架橋高分子のフィルムよりも強靭な性質を示した。また高分子反応におけるニトリルオキシドの有用性を示すために、様々な主鎖構造を持つ高分子ニトリルオキシドの合成とこれらを用いた高分子反応を実施した。 本年度の研究は以下の理由により概ね順調に進行した判断している。 ①ニトリルオキシド基含有ロタキサン架橋剤を用いた無触媒クリック反応によりロタキサン架橋高分子フィルムを首尾よく作成したこと。 ②得られたロタキサン架橋高分子フィルムは共有結合型架橋高分子フィルムよりも優れた力学特性を示したこと。 ③高分子ニトリルオキシドの高分子反応によりスター、グラフトポリマーを効率的に合成し、高分子反応におけるニトリルオキシドの優れた反応性を見出したこと。
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