研究課題
本研究では、イオン液体中で発現する高分子鎖間の超分子結合を利用した、自己修復性を持つイオン伝導性ソフトマテリアル(イオンゲル)の創製を目的としている。昨年度は、イオン液体中で発現する高分子間の水素結合と、ブロック共重合体が形成するミセルジャミング構造を利用することで、高強度・自己支持性を持ちながら室温での迅速な自己修復機能を有する自己修復イオンゲルを世界に先駆けて報告した。本年度は、自己修復イオンゲルの力学物性にイオン液体のカチオン・アニオン構造が与える影響に関する詳細な検討を行った。その結果、イオンゲルの粘弾性はイオン液体構造の微細な違いに大きく影響を受けることを明らかにした。顕著な例として、イミダゾリウムカチオンのC2位のプロトンをメチルキャップしたイオン液体を用いた場合、わずかメチル基一つの違いに関わらず得られたイオンゲルは白濁し、弾性の向上および脆化が起こり、自己修復性を発現しない。これは、カチオンと高分子の水素結合が弱くなった結果、高分子間の水素結合が非常に強くなりマクロ相分離が起こったためと考えられる。また水素結合受容性が強いアニオンを用いると、イオンゲルの弾性率は大きく低下した。これらの結果から、適切な力学特性を得るためには、イオン液体のカチオン・アニオンと高分子に存在する競合的な水素結合力を制御することが重要であると示唆された。また新たなイオン液体中で発現する超分子相互作用を利用した展開として、溶媒和イオン液体とカーボンナノチューブ(CNT)を混合することで、CNTの分散性が大きく向上することを明らかにした。これは、CNTと溶媒和イオン液体間のカチオン-π相互作用によりCNTのバンドルが解けたためと考えられる。これを利用して、CNT、溶媒和イオン液体、高分子、硫黄からなるゲル正極を作製し、リチウム硫黄電池への適用を行った。
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