研究課題/領域番号 |
18K14283
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
原 光生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10631971)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 液晶 / ポリシロキサン / 有機無機ハイブリッド / 湿度 / ナノ構造 / リソグラフィ / メソポーラスシリカ / 光固定 |
研究実績の概要 |
液晶相から液晶相への相転移をターゲットとするために、界面活性剤の種類を変更した。また、光架橋による膜の体積収縮を抑制するために、感湿性シロキサンフォトポリマーに含まれる光架橋基の量を減らし、主鎖の分岐数も検討した。これにより、液晶相を破壊することなく光固定することができた。湿度制御下の各種in-situ測定(X線回折法や水晶振動子マイクロバランス(QCM)法、赤外分光法)にて系統的に評価し、液晶相-液晶相の湿度誘起相転移を実現できることも明らかとした。本手法を応用することで、異種ナノ周期構造の簡便な集積も可能であった。潮解性を利用した界面活性剤ナノ周期構造の新規制御制御の提案として、論文や学会発表にて積極的に成果報告した。 研究を進める中で、ポリシロキサンがプラスチックと同様の力学特性を示すという想定していない現象を見出し、特許を出願するに至った。ポリシロキサンは柔軟な材料として有名であり、プラスチックに匹敵する力学特性を示すポリシロキサンの報告例は少ない。また、金属アルコキシドの重縮合反応で合成しただけのポリシロキサンが明確なナノ周期構造をもつという結果も得られた。イオン基が力学特性の向上やナノ周期構造の形成に重要である可能性が示唆され、学術的に非常に有用な知見が得られた。 今後は、当初予定していたナノ周期構造の高度な集積化や多孔質材料への展開、液晶相転移過程の可視化実験に加えて、強靭なポリシロキサンの機能発現メカニズムの解明にも注力する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は液晶相の湿度誘起相転移が目標であった。感湿性シロキサンフォトポリマーのイオン基や光架橋基の混合モル比、さらには主鎖の分岐を検討した。材料設計を最適化することで、光架橋による膜の体積収縮を抑制でき、液晶相から液晶相への相転移を湿度にて誘起することに成功した。所望の液晶相の光固定も可能であった。液晶相を鋳型とする有機無機ハイブリッドメソ組織膜の研究においては、従来、前駆体溶液の組成によって膜の構造が決定されてきたが、本研究によって製膜後に構造変換する手法を提案した。このナノ周期構造の新たな膜内構造変換手法の開発によって、異種ナノ周期構造の光パターニングまで達成した。 また、研究を遂行する中で、イオン基を有する感湿性ポリシロキサンがプラスチックに相当する力学特性を示すことを見出した。ポリシロキサンは、柔軟でシリコーンオイルの主成分として有名な材料であり、プラスチックに匹敵する力学特性は従来の常識では説明できない。この結果は、研究計画時点では想定しておらず、当初の目標にはなかった進展といえる。 上記の通り、今後の研究展開が大いに期待される結果が得られたため、2019年度は当初の計画以上の進展があったと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
異種ナノ周期構造の共存化にて得られた知見を基に、集積構造の高次元化も進め、単一の膜でラメラ相、ヘキサゴナル相、ミセル相といったような三種類の液晶相の光パターニングを試みる。異種ナノ周期構造の共存は、膜表面の原子間力顕微鏡観察および膜断面の電子顕微鏡観察にて評価する。また、液晶を除去して多孔質材料へと展開することで、高吸湿かつ大比表面積な薄膜材料を調製する。この従来にない薄膜材料の吸湿挙動やナノ周期構造変化、力学特性を評価する。湿度勾配が存在する環境下での液晶相の光固定にも取り組み、液晶相転移の過渡的な状態を可視化する。 ポリシロキサンの特異な力学特性に関するメカニズム解明も進め、イオン基の種類や量が力学特性にどのような影響を与えるのかを明らかとする。さらには、ポリシロキサンの新たな用途の探索も注力して進めていく。
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