本年度は、一年目に開発した自在変形ヒドロゲルの材料設計を基に、①一年目の研究の中で浮かんだ課題であった材料の自在変形性、分解性の改善、および②三次元組織構築に向けた検討として必須となる、材料の自在変形下での培養に取り組んだ。①について、一年目にプロトタイプとして開発した材料は、自在変形性に少々難があり、また細胞の共存下で分解を行うことが困難であった。そのため本年はまず、可逆的結合の種類を種々検討することにより、硬さをより容易にチューニングでき、細胞に悪影響を及ぼさない酵素と糖というよりマイルドな条件下、数時間程度で完全分解が進行する条件を見出した。実際に材料上に細胞が接着後十分に増殖した状態で分解条件に供したところ、土台の材料が分解され、生きた細胞がシート状に残ることが確認された。②についてはまず、①で検討し直した材料組成でも自在変形性が保たれていることを確認した。次に、材料上に細胞が接着・増殖した状態で形状を変形させ、形状固定条件に供したところ、細胞の生存下でこれを行うことができた。これにより、本研究の目標としていた三次元組織構築に向けて、形成・使用・分解の全ての観点から総合的に判断して申し分ない材料を開発できたと考えられる。 全体の研究計画の中で、三次元組織構築のための土台となる材料設計を確定させることができた。また、本研究の大きな目標であった「自在変形させながらの培養」・「培養後の分解」を、それぞれ細胞の生存下で行うことができたことは特筆すべきである。一方で、未だ検討できている細胞種が数種類に留まる点、および三次元組織構築の主流である3Dプリンターと組み合わせた組織構築など、本研究の構想段階で思い描いていた発展的な検討まで本年度中に踏み込むことはできなかった。これらは本研究期間終了後の課題となり、継続して取り組んでいく予定である。
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