研究課題/領域番号 |
18K14286
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
宇部 達 中央大学, 研究開発機構, 専任研究員 (80613364)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 架橋液晶高分子 / 相互侵入高分子網目 / 相分離構造 / フォトクロミズム / フォトメカニカル効果 |
研究実績の概要 |
架橋液晶高分子は外部刺激によるメソゲンの配向変化に伴いマクロな変形を示すため,ソフトアクチュエーターとしての応用展開が期待されている。これまでに,架橋アゾベンゼン液晶高分子に非晶高分子を導入して複合化することにより,高分子光アクチュエーターの応答性を飛躍的に向上させることに成功した。しかしながら,硬くて脆い架橋液晶高分子の力学特性は複合系においても十分に改善されていないのが現状である。一般に,高分子複合系の物性は異種成分の分布や連続性に強く依存する。本研究では,架橋液晶高分子/非晶高分子複合系におけるモルフォロジーとマクロな物性・機能を明らかにするとともに,ミクロ構造を制御することにより高分子光運動材料の高性能・高機能化を図る。 本年度は,架橋液晶高分子/非晶高分子複合系におけるミクロ構造制御と光応答性評価を行った。架橋アゾベンゼン液晶高分子と非晶高分子を逐次的に重合・架橋することにより相互侵入高分子網目(IPN)フィルムを作製した。原子間力顕微鏡(AFM),走査型電子顕微鏡(SEM),透過型電子顕微鏡(TEM)および光学顕微鏡観察から,非晶高分子の種類に応じて数十ナノメーターから数十マイクロメータースケールの相分離構造を示すことが分かった。また,ポリジメチルシロキサン中に架橋アゾベンゼン液晶高分子成分を分散させた相分離型フィルムを作製した。ポリジメチルシロキサン成分が連続構造をとることにより力学的耐久性が飛躍的に向上した。このフィルムも紫外光照射下において変形を示し,マイクロメータースケールで分布した架橋アゾベンゼン液晶高分子が力発生に寄与することが分かった。さらに,IPNにおいて非晶成分を非架橋系にすることにより,3次元成形が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は,架橋液晶高分子/非晶高分子複合系におけるミクロ構造制御と光応答性評価を中心に遂行した。複合系の構造を評価し,力学特性や光応答性との相関を考察することができた。また相分離型複合フィルムを新たに作製し,力学強度を飛躍的に向上させることができた。さらに非架橋系の導入により初期形状制御が可能になることを見出した。以上の成果は年度当初の目標に達するものであり,研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた構造・機能の相関に基づき,光運動材料の高性能・高機能化に取り組む。これまではIPNの非晶成分を変化させることによりミクロ構造を制御していたが,液晶高分子成分の種類・組成比を変化させることにより更なる特性向上が期待できる。相分離挙動や力学特性を詳細に評価し従来系と比較することにより,新規複合系の構造・物性の特徴を探究する。さらに複合フィルムを様々な形状に成形し,光応答性の向上や新規運動モードの発現をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の物品費として真空ポンプや加熱器具などの購入費を計上していたが,今年度においては既設のもので対応可能であった。次年度においては使用頻度が高くなるため新たに購入を予定している。また,試薬・ガラス器具・合成関係消耗品の購入費を計上していたが,予定よりも安価での調達が可能であった。次年度以降,測定関係消耗品の使用増加が見込まれるため,これらの購入費に充当する予定である。
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