研究課題/領域番号 |
18K14288
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉田 嘉晃 近畿大学, 分子工学研究所, 博士研究員 (00642555)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | らせん高分子 / らせん反転 / 不斉増幅 / 酸・塩基応答性 / 着色変化 |
研究実績の概要 |
本研究では、酸・塩基環境下で共役-非共役が可逆的にスイッチする不斉らせんポリマーの創成を目的とする。N置換マレイミドを原料とする不斉らせんポリマーを合成するためには大別して①光学活性なモノマーを重合する、②重合系に不斉因子を加える、のどちらかの手法を用いることが汎用的である。本研究ではまず①の手法を用いて不斉らせんポリマーを合成することを試みた。はじめに、安価で入手容易な不斉源として種々のアミノ酸を用いて光学活性なモノマーの合成を行った。特に、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の内、第二級アミンに分類されるプロリンを除く19種類のアミノ酸を原料として用いた。一般的に、アミノ酸を原料とする合成反応では副反応を抑制するために高い反応性を有するカルボキシル基あるいはアミノ基に保護基を導入して目的の化合物へと誘導する。一方で、N置換マレイミドは無水マレイン酸と第一級アミンから脱水縮合によって簡単に合成することができる。したがって、本研究でモノマーとして用いるアミノ酸含有マレイミドを合成するにあたり、その合成ステップを少なくするために可能な限り保護基を用いない合成法を試みた。19種類のアミノ酸の内、脂肪族アミノ酸であるアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンの4種類および芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンの3種類からはカルボキシル基を保護せずに目的のモノマーを合成することができた。一方、反応性が高いチオール基を有するシステインにおいてはチオール部位をメチル化することで目的のモノマーを合成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究費の採択が決定された直後に平成30年度をもって近畿大学分子工学研究所が閉所されること、また平成31年度から九州工業大学に移転して分子工学研究所が新設されることが通知された。平成30年6月頃から本格的な移設作業が開始され、主要な分析装置および実験設備の使用が大きく制限さることになり、十分な時間をかけて研究課題を遂行することが困難となった。したがって、平成30年度では研究課題の一段階目となるモノマーの合成法の検討のみ実施した。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、平成30年度にモノマーおよびポリマーの合成法を確立し、種々の官能基を有するポリマレイミドを合成することを計画していた。平成30年度においてモノマーの合成経路について種々検討を行うことができたため、平成31年度においては得られた知見に基づいてモノマーの最適な合成方法を確立し、続いてポリマー合成の検討を行う予定である。モノマーおよびポリマーの合成については平成31年度前半で達成することを目標とする。平成31年度後半では、当初の計画通りに合成したポリマーの詳細な構造解析を行い、研究課題の目的となる外部刺激によるポリマーの不斉制御を達成することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
近畿大学から九州工業大学への研究所移設に伴い、新規購入した備品はすぐに移管手続きを取る必要があったこと、また試薬類を移転先に持ち込むことができない等の理由のため、平成30年度における研究費の使用を大きく制限しなければならい状況となった。したがって、移設後の平成31年度に必要となる備品および試薬を含む消耗品を購入する方が研究課題を遂行する上で効率的であったため、平成30年度に予定していた研究費を平成31年度に使用することとした。 次年度に持ち越した研究費は基本的に当初計画していた平成30年度および平成31年度の使用計画に準じて使用する予定である。ただし、平成30年度の成果発表に計上していた予算の一部は新規備品として円二色性測定装置用アクセサリーの購入に充てることを計画している。
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