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2020 年度 実績報告書

熱成形可能な人工クモ糸シルクの合成

研究課題

研究課題/領域番号 18K14290
研究機関信州大学

研究代表者

矢澤 健二郎  信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (70726596)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードシルク / クモ / カイコ / 圧力 / 湿度 / 熱成形 / 結晶領域 / 非晶領域
研究実績の概要

シルクの熱的成形を行う場合、成形後にその物性を任意にデザインできることが望ましい。本年度は、天然のクモ糸とカイコ糸を溶媒に可溶化し、シルク分子間の水素結合を解離させることによって、分子鎖が密に存在する部分である結晶領域を解体して、分子鎖が疎に存在する非晶領域を多く含むフィルムを作成した。この非晶性フィルムに対して、圧力印加と湿度処理を行うことで、シルクフィルムの結晶構造と力学物性への影響を評価した。
圧力印加に対して、クモシルクフィルムは980 MPaまでの圧力印加に対して応答を示さなかった一方で、カイコシルクフィルムは100 MPa前後の圧力印加に応答し、非晶領域が結晶領域に転移することが見出された。
一方で、湿度処理に対する応答性を調べたところ、クモとカイコシルクフィルム共に、相対湿度97%の処理によって、非晶領域が結晶化することが判明した。このようなクモとカイコシルクの圧力と湿度に対する応答性の違いは、構成するアミノ酸配列の違いによるものだと考えられる。クモシルクを構成するアミノ酸配列は、ポリアラニンが主要であり、カイコシルクの場合はグリシンとアラニンの交互配列が主となっている。しかしながら、アミノ酸配列依存的な分子鎖の圧力応答性の違いの詳細については未だ分かっておらず、今後の課題である。
圧力と湿度処理後のシルクフィルムは、処理前のフィルムと比較して、強度が向上していることが分かった。このことから、シルクを材料として使用する際には、圧力印加や高湿度処理によって、その物性を変化させることができることが本研究で示された。
シルクは軽量性・高強度性・柔軟性・低細胞毒性・生体適合性・生分解性などの特長を有しており、持続可能な開発目標(SDGs)に適合した次世代材料として注目されており、「圧力」と「湿度」で物性をデザインできることは、シルクの有用性を向上できると考えられる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Forcibly spun dragline silk fibers from web-building spider Trichonephila clavata ensure robustness irrespective of spinning speed and humidity2021

    • 著者名/発表者名
      Yazawa Kenjiro、Sasaki Umi
    • 雑誌名

      International Journal of Biological Macromolecules

      巻: 168 ページ: 550~557

    • DOI

      10.1016/j.ijbiomac.2020.12.076

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Pressure- and humidity-induced structural transition of silk fibroin2020

    • 著者名/発表者名
      Yazawa Kenjiro、Hidaka Kosuke
    • 雑誌名

      Polymer

      巻: 211 ページ: 123082~123082

    • DOI

      10.1016/j.polymer.2020.123082

    • 査読あり
  • [学会発表] 水分子がクモ糸の結晶構造に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      日高 康輔・矢澤 健二郎
    • 学会等名
      令和3年度 蚕糸・昆虫機能利用学術講演会
  • [学会発表] 野蚕シルクの強度と巻き取り速度の関係2021

    • 著者名/発表者名
      舘林 有加・梶浦 善太・矢澤 健二郎
    • 学会等名
      日本蚕糸学会中部支部第76回・東海支部第72回研究発表会
  • [学会発表] カイコシルクH鎖を利用した湿式紡糸2021

    • 著者名/発表者名
      中山 堅登・後藤 康夫・矢澤 健二郎
    • 学会等名
      日本蚕糸学会中部支部第76回・東海支部第72回研究発表会
  • [学会発表] クモシルク不織布の構造・力学物性と細胞接着性2021

    • 著者名/発表者名
      水上 紗衣花・玉田 靖・矢澤 健二郎
    • 学会等名
      日本蚕糸学会中部支部第76回・東海支部第72回研究発表会
  • [学会発表] クモの糸を水中で形成させることは可能なのか?2021

    • 著者名/発表者名
      﨑山 真喜人・森 研堂・矢澤 健二郎
    • 学会等名
      第62回 日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 湿度および変形速度依存的なクモ牽引糸の結晶構造と力学物性2020

    • 著者名/発表者名
      矢澤 健二郎, 沼田 圭司
    • 学会等名
      第69回高分子学会年次大会
  • [学会発表] シルクフィブロインの結晶化における溶媒の効果2020

    • 著者名/発表者名
      日高 康輔・矢澤 健二郎
    • 学会等名
      2020年繊維学会年次大会
  • [学会発表] 湿度と巻き取り速度に非依存的なクモ糸のロバストネス発現に関する研究2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木 うみ・矢澤 健二郎
    • 学会等名
      2020年繊維学会年次大会

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公開日: 2021-12-27  

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