研究課題/領域番号 |
18K14293
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
米川 盛生 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (60724151)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱硬化性樹脂 / 環状オリゴマー / 高耐熱性 / 強靭性 / エポキシ樹脂 / ベンゾオキサジン樹脂 |
研究実績の概要 |
本研究は環状オリゴマー構造を有するモノマーを用いて熱硬化を行い、得られた硬化物の熱特性や機械特性を評価することで、環状オリゴマー構造と硬化物物性との関係性を明らかにすることを目的とする。そこで初年度はフェノールの環状8量体であるカリックス[8]アレーン骨格を有するエポキシ化合物を用いて硬化物の作成を検討したが、単独での硬化反応は困難であったためベンゾオキサジン樹脂と混合し、示差走査熱量測定および赤外分光測定により硬化挙動を解析したのち、硬化物の動的粘弾性測定、熱重量分析、3点曲げ試験、破壊靭性試験、誘電率測定を行うことで各種物性を評価した。硬化物の動的粘弾性測定、熱重量分析からカリックス[8]アレーン構造が硬化物中に多く導入されるとガラス転移温度と熱分解温度が大きく上昇することが明らかとなった。一方、曲げ強度はカリックスアレーンのエポキシ化合物/ベンゾオキサジン=10/90(エポキシ環/オキサジン環のモル比)のときに極大値を示し、それよりもカリックスアレーンの割合が大きくなると低下した。また、破壊靭性値はカリックスアレーンの割合の増加に伴い単調に減少した。これらのことは①カリックス[8]アレーンの剛直な環状骨格と、②モノマー中に多数のエポキシ基が存在することにより、硬化物の物理的耐熱性と化学的耐熱性の両方が上昇する一方で、架橋密度が増加することにより硬化物が脆くなったものと推測される。誘電率及び誘電正接はカリックス[8]アレーンのエポキシ化合物の増加に伴い漸減したが、これはモノマー中における脂肪族炭化水素の割合がベンゾオキサジンよりも大きいためであると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はフェノールの環状8量体であるカリックス[8]アレーンのエポキシ化合物とベンゾオキサジンとの共重合体という限定された系ではあるが、曲げ特性や破壊靱性といった機械特性も含めて硬化物物性と環状オリゴマー構造との関係性を明確にすることができた。他方で、環状4量体や環状6量体構造を有するモノマーの硬化物を作製するにはモノマーの溶解性の低さを克服する必要があることがわかった。当初計画をおおむね遂行できたため(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究を進めていく上でカリックスアレーン化合物の溶解性の低さ(融点の高さ)が課題であることが明らかとなった。そこでまず、以下のような検討を行い、カリックスアレーン類の中でも溶解性の低いカリックス[4]アレーン構造を有する硬化物を作製できる条件を見出す。①溶媒にエポキシ化合物を溶解させたのち乾燥させ、得られたフィルムを硬化させる。②エポキシ基以外の重合性官能基の導入により溶解性を上昇させる。③オリゴマー化により溶解性を向上させる。その後、同様の条件でカリックス[6]アレーン、カリックス[8]アレーン構造を有する硬化物を作製し、硬化物の熱特性と機械特性を評価・比較することで環サイズと硬化物物性の関係性を明らかにする。加えて、環状オリゴマー構造を有する樹脂の金属やガラス繊維との接着性についても評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:硬化反応に用いるモノマーの分子構造を当初計画から変更したために、試薬購入費が予定よりも少額だったため。 使用計画:次年度繰越分はモノマーの合成操作および樹脂混練のための撹拌装置の購入、研究成果発表のための旅費などに使用する予定である。
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