研究実績の概要 |
本研究課題は環状オリゴマー構造を有する化合物を用いて熱硬化反応を行い、得られた硬化物の熱特性や機械特性を評価することで環状オリゴマー構造と硬化物物性の関係を明らかにすることを目的とする。 最終年度である令和3年度は、単官能性オキサゾリン化合物を用いてネットワーク形成のモデル反応を行った。p-tert-ブチルカリックス[n]アレーン(n=4, 6, 8)と2-フェニル-2-オキサゾリンをフェノール性水酸基とオキサゾリン環が等モル量になるように混合し、無溶媒で160℃/1時間+180℃/1時間+200℃/2時間+230℃/2時間+250℃/2時間加熱し、1H NMR測定により反応率を追跡した。また、比較のためカリックスアレーンの代わりにp-tert-ブチルフェノールノボラックの直鎖状4量体を用いて同様の実験を行った。1H NMR測定の積分比から見積もったオキサゾリン環との反応率は、すべての温度領域で直鎖状4量体>環状8量体>環状4量体の順であった。環状6量体の反応率の序列は温度域によって変化したが、最終的な反応率は直鎖状4量体>環状8量体>環状6量体>環状4量体の順であることが確認された。このモデル反応の結果から、ネットワークポリマーにおいても環サイズの大きなカリックスアレーンほど反応率が高いものと推測された。 他方、ネットワークポリマーの動的粘弾性測定におけるガラス転移温度は環状6量体>環状8量体>環状4量体>直鎖状4量体であることがこれまでの研究で明らかとなっている。このことから環サイズが小さいものほど分子運動性が抑制された構造であり、その効果が硬化物のガラス転移温度に寄与していることが推察された。
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